2019年7月13日の本日から大阪で特別展「昆虫」が始まりました!
前日に内覧会も見てきましたが、初日にはリレー講演もあったので2日連続で行ってきました。
読売新聞にも掲載されてました
これはワクワクしますね!
この記事は昆虫大好き昆虫写真家「村松佳優」が書きました
はじめまして。昆虫写真家の村松です。
このサイトでは昆虫の写真を通して自然に関心を持つ人がたくさん増えるようにと運営しています。写真を使って昆虫の紹介をしたり、興味を持つ人が増えればと飼育やイベントレポートなどの記事も書いています。
村松が更新している昆虫写真図鑑Webサイト「ムシミル」でも日本に生息する昆虫の写真が見られます。
特別展昆虫大阪関連の記事
特別展昆虫 大阪 2019 初日の混雑状況
初日の混雑状況は天候が悪かったせいもあるのか、そんなに滅茶苦茶混んでいるということはありませんでした。
これから夏休みに入っていったり、梅雨が開けてくるともっと人が増えてくると思いますので、興味のある方は早めに行かれたほうがよいかもしれません。
イベントの内容「2019年 特別展昆虫 in 大阪」
2018年に東京の国立科学博物館で開催され、44万人を超える人が訪れた人気の昆虫展です。
2019年には大阪で開催され、東京展を見ることができなかった人にとっては待ち遠しかったのではないでしょうか。
大阪展ならではの工夫がされているところもあって楽しめますよ!
イベントの基本情報です。
・イベント名称
特別展「昆虫」
・場所 大阪 長居公園
大阪市立自然史博物館ネイチャーホール(花と緑と自然の情報センター2階)
〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-23
TEL:06-6697-6221 FAX:06-6697-6225
HP:http://www.mus-nh.city.osaka.jp/
最寄は地下鉄の「長居駅」が良いと思います。詳しくはサイトで確認してください。
・期間
2019年 7月13日(土)~9月29日(日)
休館日:7月16日(火)、22日(月)、29日(月)、8月19日(月)、26日(月)、9月2日(月)、9日(月)、17日(火)、24日(火)
・時間
9:30~17:00 (入場は16:30まで)
・料金
【前売券】大人¥1,200 高大生¥600
【当日券】大人¥1,400 高大生¥800
中学生以下は無料です!
会場への行き方
会場への向かい方は、内覧会に行ったときにも詳しく書いているので、こちらの記事も御覧ください。
いくつか注意点があって、昆虫展は大阪市立自然史博物館ネイチャーホールの「花と緑と自然の情報センター2階」で開催されています。館内の階段を使っても上がれるのですが、基本は南側の入り口から入ったところにある外の階段を使って2階へ上がって入場するようです。前日の内覧会へ行った時とは少し変わっていました。
(正門から行っても遠回りになるだけで道はつながっているので問題はありません。)
左へ行くと「正門」、右へ真っ直ぐ行くと「南側の入り口」
南側の入り口から中へ
ここから上がってくださいの看板
外に設置された階段。階段を上がると緑も美しく素敵な場所から入場できます。
屋外の階段を使ってくださいの注意看板
展示の内容と見どころ!
展示は大きく5つのカテゴリーにわけて構成されています。
昆虫の展示をもっと楽しめるように、最初は昆虫とは一体なんなのかを基礎から歴史まで学んでいきます。
そこからは多様性に溢れ、不思議と面白さに包まれた昆虫の世界を堪能し、昆虫の生態や能力についても展示で楽しんでいきます。
最後には、昆虫の研究者がどのような取り組みを行っているのかを知ったり、その研究が私達の生活にどのように溶け込んでいるのかを見ることができます。
展示の構成や流れも素晴らしいので初めて行く方は順番に沿ってみていくのが楽しいと思います。
一番最初は巨大昆虫がお出迎え!
CHAPTER 1 昆虫とは
1-1 昆虫の身体
昆虫とは一体どんな生き物なのかを、資料や展示の中で学んでいきます。
普段は虫と呼んでいるけれども、実際には昆虫の分類ではない蜘蛛やダンゴムシはどこが違うのかなどもわかります。
1-2 昆虫の歴史
昆虫はいつごろ誕生したのか?から始まりますが、化石で見つかっているメガネウラの実物大模型などがテンションの上がるポイントです!
大きいトンボ!?とても大きいですよ!
メガネウラの実物大模型
日本初公開の「絶滅目」の昆虫!琥珀に閉じ込められた状態で展示されています
アリエノプテラ目という、今はもう存在しない目の昆虫の実物が展示されています。
琥珀に入った実物が展示されるのは日本では初めてのことのようで今回の見所の一つでしょう!
小さいのでしっかりよく見てくださいね!
コラム:チョウとガの違い
昆虫の話になるとよく聞かれる質問ですが、そのことについて詳しく説明されているコラムがこのコーナーにあります。
結論としては、この2つに本質的な違いはないということですが、その理由などはぜひ会場で読んでみてください。
図録で後からでも読めますが、昆虫の面白さや難しさを一回ここで考えてみると、この後の展示をもっと楽しめると思います!
CHAPTER 2 昆虫の多様性
2-1 多様性の3つのレベル
ここで書かれていることは少し難しい。生物多様性条約では生物の多様性には3つのレベルがあるという話がされています。
・生態系の多様性
・種の多様性
・遺伝子の多様性
について触れられている。
すごく簡単にまとめると「いろんな環境に色んな種類がいて、一つ一つの個体には個性があるよね!」くらいで良いと思います。
2-2 さまざまな環境に住む昆虫
ここでは、「関西近辺」「沖縄」「海外」で見られる昆虫にはどんな違いがあるのか?を展示しています。
「関東近辺」が「関西近辺」に変わっている
東京展の時には「関東近辺」で展示されていたので、関西で見られる昆虫にかわっているのは大きな変更点ですね。セミひとつとっても、関東ではアブラゼミやミンミンゼミが多いところが、関西ではクマゼミが多いなどの違いがあったりします。
さらに、
・人家周辺(耕作地なども)
・林縁
・林内
・流水域(渓流、河川)
・止水域(池沼、水たまり)
などの環境で見られる昆虫の違いを標本を通して見ることができます。
おなじみのカマキリやオンブバッタなどは人家周辺で見られますし、渓流などだとトンボの仲間が多く展示されています。
海外と日本で見られる昆虫が違うのはわかりやすいですが、環境によって見られる昆虫の違いが展示を通して観察できるのは面白いですね!
2-3 特徴のある昆虫
ここではたくさんの昆虫の標本を様々な切り口で見ることができます。
一部を紹介します!
大きい昆虫・小さい昆虫:チョウ・ガ
世界最大級の昆虫「メガスティック」の一種
すごい形の昆虫
美しい昆虫
たくさん標本が展示されていますが、良かったら探してみてくださいね!
ゴキブリとは「Gの部屋」
いきなり煽ってくるのがこの注意
観覧注意まで書かれるとはいったいなんなのでしょうね(笑)
ゴキブリは苦手な人も多いことから、わからなくもないですが。
しかし、ゴキブリが世界に何種類くらい存在するか知っている人はそんない多くはないと思います。
そして、たくさんの種類のゴキブリの中には、あっと驚くようなゴキブリがたくさんいるのです。
この展示を見た後にはゴキブリに対する認識が大きく変わると思います!
一部を紹介です!
ニコニコゴキブリ
「キイロテントウゴキブリ」と「ケンランマルゴキブリ」
昆虫の多様性と保全
東京展の方では2-4の大きな項目として扱われていましたが、大阪展では昆虫の特徴に含まれています。
絶滅が心配されている「ツシマウラボシシジミ」が紹介されていました。
国内では長崎県の対馬にのみ生息していますが、シカが増えてツシマウラボシシジミの食草を壊滅させてしまったことで、種の存続が難しくなっってしまったチョウチョです。
そこで種の保全を増殖を目的として、現地ではシカの柵を設置して食草を守ったり、人工繁殖や再導入が積極的に進められています。
人工繁殖で驚異力している施設には箕面の昆虫館などもあります。飼育員さんに話を聞いたところ、オスとメスをうまくくっつけて卵を産ますのが少し難しいようで、人工繁殖でも簡単には増えないようです。
CHAPTER 3 昆虫の生態
3-1 昆虫の生態
「食べる」「住む」「たたかう」「まもる:擬態する虫たち」「ふやす」「産卵」それぞれについて写真や標本を使って見せています。
「住む」のコーナーの中ではクロオオアリのコロニーの観察ができるように巣箱が設置されています。
クロオオアリの巣(コロニー)
コラム:イグノーベル賞受賞・トリカヘチャタテ
イグノーベル賞とはノーベル賞のパロディーとして「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に対して与えられる賞で1991年に創設されました。
2017年の生物学賞を受賞した研究がここのコラムで展示されています。
ここで発表されている「トリカヘチャタテ」の研究の何がすごかったのか。
それは、メスが生殖器をオスに挿入して産卵の準備をするのです。つまりは、今までの私達の常識から考えるとオスとメスが逆転してしまっているのです。
びっくりです!
3-2 他の昆虫との関わり
ここでは「アリの巣・シロアリの巣」として、アリの巣に共生する昆虫たちについてまとめられています。
アリやシロアリの巣では集団生活が営まれているのですが、その中に違う種類の昆虫が紛れ込んでいることがあります。
そのような昆虫たちを「好蟻性(こうぎせい)・好白蟻性(こうはくぎせい)昆虫」と呼ぶのですが、とても興味深い内容でした。
アリの巣に紛れ込む昆虫たちはあらゆる手段を使ってアリのフリをしているのです。違う種類だとバレたら襲われてしまいますしね。
そんなアリと好蟻性昆虫の4コマ漫画が展示されています。作者は「いずもり・よう」さんです。
CHAPTER 4 昆虫の能力
昆虫の身体能力を「飛ぶ」「歩く」「泳ぐ」「跳ねる」につてパネルが展示されているのと、それを白黒の映像にした作品が上映されています。子供と一緒に見ると楽しいですよ!
という経典ではもう少しボリュームがあって「昆虫の感覚とコミュニケーション」というテーマで「見る」「聞く(感じる)」「音を出す」「フェロモン」などについて展示されていました。ここも図録には掲載されています。
CHAPTER 5 昆虫研究室
5-1 昆虫研究者の仕事
ここでは昆虫研究者の仕事として一体どんなことをしているのか?
昆虫を採集してどのように調べていくのかを動画で説明しています。
5-2 採集する
昆虫採集に使う道具がたくさん展示されています。
採集用具の展示
昆虫採集とマナー
5-3 標本を作る
標本の作り方や道具が展示されています。
保存の方法なども説明されているので勉強になります。
5-4 コレクションを構成する
数万点を超える標本の展示
宝塚昆虫館標本
今回展示されている中で興味深かったのは「宝塚昆虫館のコレクション」です。
宝塚昆虫館は1939年に開館し1968年に閉館しました。失われた標本も多いようですが大阪市立自然史博物館に移管されて保存されているものが今回たくさん展示されています。
その中には100年近く昔の標本なども残されているので、戦前に採集されていた標本が残っている事自体にも驚きました。
昔の関西の昆虫の生態系を想像することができて面白い展示だと思います。
5-5 観察する
ここでは最新の昆虫の観察方法が紹介されています。
ただ、飼育したり標本を眺めるのではなく、最新の技術を使って3Dの画像を作成したりできます。
他にも「ナノスーツ法」や「X線マイクロCT」なども紹介されているのですが、かんり高度な技術が使われていることを知ってかなり驚きました。
5-6 研究する
大阪展においては大阪市立自然史博物館の学芸員である松本吏樹郎(まつもとりきお)さんが新種記載された「Dolichomitus flavicrus」というハチの仲間を展示するとともに、どのように新種として認められていくのかが紹介されています。
まだ記載されたばかりなので和名がついていないんですね。
松本吏樹郎(まつもとりきお)さんが新種記載された「Dolichomitus flavicrus」の展示
5-7 昆虫研究のこれから
最後のまとめに入ってきたのが人との関わりです。
環境を通して人と関わってきた昆虫の話はここまでもたくさんありましたが、ここで言う人との関わりはもっと直接的なもので、昆虫の作るモノであったりその能力のことです。
昆虫が作るものとして有名なものはカイコが吐き出す糸を「シルク」として利用したり、ミツバチが集めてくる「ハチミツ」などです。
能力でいうと、昆虫の優れた機能や構造を模倣することで私達の生活に利用する「バイオミメティクス」がありますが「モルフォテックス」や「モスマイト」について紹介されています。
モルフォチョウの羽
モルフォチョウの羽は見る角度によって色が変わります。本来は羽に色はついていないのですが、その羽根の構造によって光の反射をコントロールし美しい色を見せてくれるのです。
その構造を「構造色」というのですが、その構造色を調べて応用することで新しい素材の開発をしたのがモルフォテックスです。
昆虫研究の歴史と未来
最後には「昆虫は身近な存在であり、あらゆる自然科学研究へとつながっている」と締めくくられています。
特別展「昆虫」監修者
この素晴らしい展示を監修してくださった皆様方です。感謝感謝です。
- 総合監修:野村周平(のむらしゅうへい)国立科学博物館
- 監修:神保宇嗣(じんぼうつぎ)国立科学博物館
- 監修:井手竜也(いでたつや)国立科学博物館
- 監修:丸山宗利(まるやまむねとし)九州大学総合研究博物館
- 監修:松本吏樹郎(まつもとりきお)大阪市立自然史博物
香川照之さんも出演する音声ガイド
香川照之さんも出演する音声ガイドは500円でレンタルできます。
全部で20件の音声ガイド(1件はボーナストラック)が入っていて、合計時間は約35分になるボリュームです。
昆虫すごいぜでおなじみの香川さんのメッセージを楽しむことももちろんですが、各展示の内容を補足してくれたり解説してくれる音声ガイドを利用すると展示を何倍も楽しめると思います!
問題点は、どんな展示のときでもそうなんですが友人と一緒に行った時は音声ガイドを集中して聞けないことですね(笑)
美術館などと違い、友人や子供とワイワイしながら楽しめる展示なので集中して聞けないかもしれません。しかし、聞き逃したとしても何度でも聞くことができるので心配しなくても大丈夫です。
特別展昆虫のグッズ紹介
特別展昆虫のイベントショップにも力が入っています。
本のコーナー
アクタエオンゾウカブトムシのグミと昆虫立体パズル
私も少しお土産にグッズなど買ったので紹介しますね!
特別展昆虫に行ってきました!プリントクッキー 972円(税込)
レザー付箋ブック(2個セット)1,080円(税込)
モバイルクリップレンズ 1,458円(税込)
美しい昆虫5連ラムネ 324円(税込)
特別展「昆虫」学習帳(タイヨウモルフォ/ヒョウモンカマキリ)378円(税込)
ネイチャーホール1階のショップ
ネイチャーホール1階にも普段から自然史博物館のグッズをおいているコーナーがあります。
特別展昆虫に合わせて昆虫のグッズを強化して販売していますのでお時間あったらのぞいてみると面白いですよ!
本のコーナーも昆虫関連のものを豊富に増やしているみたいです。特別展昆虫のイベントショップと合わせてこちらで色んな本を見てみるのも良いですね!
PR:昆虫グッズのお店「いきものものや」
昆虫写真家の村松佳優が撮影した昆虫写真を使ったスマホケースなどの販売をしているショップです。昆虫グッズに興味のある方はのぞいてみてください。
特別展昆虫の大阪の図録
2018年の東京展を見られた方は、今回の大阪展で販売されている図録に違いがあるのかが気になるところだと思います。
ショップの店員さんに東京展と中身は違うのか?と質問したところ「まったく同じものになります」と返答されたのですが、実際に買ってみると違う点もありました。
図録の東京版と大阪版の違い
一番大きな違いは「大阪展のBONUS CHAPTER」が増えています。
1-1 関西の昆虫
[COLUMN 13]ところ変われば虫変わる
1-2 大阪市立自然史博物館の特徴的なコレクション
小路嘉明(しょうじよしあき)チョウ類コレクション
後藤光男(ごとうみつお)甲虫コレクション
常木勝次(つねきかつじ)有剣ハチ類コレクション
宝塚昆虫館標本
[COLUMN 14]大阪にちなんだ名前の昆虫
ページ数にすると184-191ページまでが増えています。
他の変更点は背面の年号が東京展の図録が「2018」だったのが、大阪展では「2018-2019」にかわっていたり、主催や協賛がかわっているのでそこに変更があるくらいです。
他のところに違いはみられませんでした。
まとめ
特別展昆虫は、前回の東京移転と比べると少し規模が縮小されていますが、それでも十分に楽しめるクオリティの展示です。フリーパスも持っているので、行きたいという方がいたら案内もしてあげようと思います。