ガムシ科とは?
コウチュウ目に含まれるグループです。
一見するとゲンゴロウの仲間のようにも見えますが、泳ぎが下手で触角の先が棍棒状になっていることで見分けられます。
あまり馴染がないかもしれませんが、愛嬌のある顔をしていて、かわいい昆虫なので観察してほしいです。
水生コウチュウとして、池や沼や水田などで生活するものが多いですが、陸で生活をしている種類もいます。
ガムシ科の写真ギャラリー
Hydrophilidae
※クリックすると各ページに飛べます。写真と詳しい説明があります。
名前の由来
ガムシは、腹部側の胸にトゲのような突起がついています。
その突起が獣の「牙」のように見えることから「牙虫(ガムシ)」と名付けられました。
ガムシとゲンゴロウとの違い
同じ水生昆虫で雰囲気も似ていることからよく混同されるのですが、ゲンゴロウよりはエンマムシなどに近い種類となります。
見分けるポイントもいくつかあります。
- 泳ぎ方の違い
- 空気の取り込み方の違い
- 腹面の突起の違い
- 後ろ脚(あし)の違い
- 食性の違い
泳ぎ方の違い
ゲンゴロウは後ろ脚を同時に動かして真っ直ぐに進みます。
一方ガムシは、両脚をばたつかせるようにバラバラに動かしながら進みます。まるで水中を歩いているような泳ぎ方です。
空気の取り込み方の違い
ゲンゴロウはお尻を水面に突き出して空気を取り込みます。
ガムシは水面に触角を突き出して空気を取り込みます。
腹面の突起の違い
ガムシの腹部には「牙」を思わせるような突起がついています。
後ろ脚(あし)の違い
ゲンゴロウのほうが泳ぎに特化して、後ろ脚が泳ぐために発達しています。
後ろ脚が長く、遊泳毛と呼ばれる毛がしっかりとしています。
ガムシも泳ぐために毛を持つものが多いですが、ゲンゴロウほどではありません。
食性の違い
ゲンゴロウは基本的に肉食性です。
ガムシも動物性のものを食べたりもしますが、雑食か植食性の物が多いです。
ガムシの幼虫や生態
産卵と卵のう
ガムシ科の昆虫は卵のうを作る習性があり、3タイプに分けられます。
ガムシやコガムシなどは泡状物質に包むタイプの卵のうを作ります。中には10個から数十個の卵が入っています。
ツヤヒラタガムシの仲間やマルガムシの仲間は、絹糸の膜に包むタイプで種類によって石のくぼみや水中の植物の表面に卵のうを作ります。
スジヒラタガムシの仲間はメスの腹部に卵のうを抱えて守っています。
幼虫と食性
成虫は植食性のものや、死体なども食べる雑食性のものが多いのですが、幼虫は肉食性の物が多いです。
「ガムシ」の幼虫などは、左右非対称になった大アゴで、缶切りの要領で巻き貝なども開いて食べてしまいます。
寿命
種類にもよりますが、成虫の寿命は野外では1年程度と考えられています。
ガムシの種類
ガムシ科の中でもいろんなガムシがいますので「属」で分けられているものを紹介します。
- タマガムシ属
- ヒメタマガムシ属
- ゴマフガムシ属
- マメガムシ属
- シジミガムシ属
- チビマルガムシ属
- マルチビガムシ属
- コガムシ属
- ガムシ属
- ヒメガムシ属
- スジヒメガムシ属
- マルガムシ属
- ヒメマルガムシ属
- コマルガムシ属
- ヒラタガムシ属
- ツヤヒラタガムシ属
- コクロヒラタガムシ属
- スジヒラタガムシ属
- クロシオガムシ属
- セマルガムシ属
ガムシの飼育
水槽が必要
ガムシを飼育しようと思ったら水槽が必要になります。飛ぶこともあるのでフタができるものでないと逃げ出す可能性があります。エアポンプは必須ではないですが、定期的に汚れなどは取り除いてあげたいですね。
水は低めに入れてあげて、水草などを入れておいてあげましょう。
多めに入れておくと、上に登ったりもできますしエサにもなります。
ずっと水の中に潜って生活するわけではないので、水上に登れるような場所を作っておいてあげることも大切です。
食べ物や餌(エサ)は?
成虫のガムシの飼育はそれほど難しくはありません。
ガムシも種類によって食性は様々ですが植食性のものや雑食性のものが多いです。
水草や藻類、種類によっては腐植質のものなどを食べています。
動物性のタンパク質を好んで食べるものもいますが、生きているものを襲うのではなく、死んだ生き物に集まったりします。
飼育下では金魚の餌(エサ)もおいしそうに食べています。
幼虫は完全な肉食で、巻き貝などの準備が必要になります。
種類によって食性も異なるので、少し調べてから準備するエサを考えると良いでしょう。
絶滅危惧種
ガムシに限らないのですが、日本の環境の変化で水生昆虫達には住みにくい場所が増えてきました。
代表的なガムシも、かつては日本の普通種でしたが全国的に数を減らしており、南西諸島では絶滅寸前と言われています。
レッドデータブック(2014)でも、ガムシの仲間の多くがなんらかの指定を受けています。
原因としては様々なことが考えられていますが「湿地などの開発」「ため池などの圃場整備」「水質汚濁」「水田の管理放棄」「外来種アメリカザリガニの影響」など様々な問題が複合的に考えられています。
絶滅危惧 レッドデータブック(2014)
- ホソガムシ 絶滅危惧ⅠB類(EN)
- セスジガムシ 絶滅危惧ⅠB類(EN)
- シジミガムシ 絶滅危惧ⅠB類(EN)
- チュウブホソガムシ 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
- コガタガムシ 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
準絶滅危惧(NT)
- イヘヤダルマガムシ
- ヨナグニダルマガムシ
- アマミセスジダルマガムシ
- ヤマトホソガムシ
- クロシオガムシ
- ミユキシジミガムシ
- マルヒラタガムシ
- スジヒラタガムシ
- エゾコガムシ
- ガムシ
- エゾガムシ
食用としてのガムシ
あまり馴染みは無いですが、日本でも一部の地域では昔から食べていたようです。
東南アジアなどでは素揚げにして食べることも一般的です。
ガムシが載っている本タイプの図鑑を紹介
ゲンゴロウ・ガムシ・ミズスマシ ハンドブック
お手頃価格なハンドブックのシリーズ。代表的な水生昆虫を中心に160種ほどが紹介されています。
日本の水生昆虫(ネイチャーガイド)
なんと485種も掲載しているボリュームのある図鑑です。図鑑と呼ばずにネイチャーガイドとうたっているのは、標本写真ではなく生体写真を中心にページを作っているこだわりでしょう。
ガムシやゲンゴロウだけでなく、水面や水中を主に活動場所とするタガメやアメンボなどが網羅されています。
これだけ載っていて5,000(税抜)はお得感があります。
他にも昆虫全般を扱ったものにも、ちゃんとガムシは載っているんですが、だいたい1ページとか半ページで数種類程度なので、本格的に興味を持ったらこれらの図鑑を買ってみるとよいでしょう。