カマキリ目(蟷螂目)とは?
カマキリ目は日本で10種類ほどが生息しています。鎌のようになった前脚(まえあし/ぜんきゃく)で他の昆虫などを捕えて食べる肉食性です。泡の塊の中に卵を産み、それが固まったものは卵鞘(らんしょう)と呼ばれます。
愛嬌のある仕草や、こっちを見ているような表情から人気の昆虫です。
カマキリ目の写真ギャラリー
Mantodea
※クリックすると各ページに飛べます。写真と詳しい説明があります。
カマキリ科(蟷螂科)Mantidae
カマキリの持ち方
背中から羽の付け根の部分を押さえるようにつかめば、挟まれたり噛まれたりすることもありません!
最初は慣れないでしょうが、素早く掴むのがコツです。
動き回ってしまいますが、無理に持たずに手の上のそっと乗せてあげて観察するのも優しくて良いと思います。
腕を登ってくるので、反対の手に誘導しながらじっとしてくれるのを待ちましょう。
カマキリの名前の由来
漢字で書くと「鎌切・蟷螂」
カマキリの漢字もカッコよいですよね。
分類学では「蟷螂目」と書くのですが、一般には「鎌切」です。
鎌切というのは「鎌で切る」が語源になっているという話や、「キリギリスの仲間で鎌をもっているから」という話もあります。
実際には鎌ではないので、切るということはせずに獲物の昆虫を挟んで押さえるだけなんですけど。
今では「蟷螂目」として独立して扱われますが、昔のカマキリはバッタやキリギリスに近い仲間として紹介されていたんですね。
蟷螂の斧(とうろうのおの)
「蟷螂」この漢字は「とうろう」とも読みます。
有名なコトワザに「蟷螂の斧(とうろうのおの)」というものがあって、もともとの意味は違いますが「力のない者が、自分の実力もかえりみずに強い者に立ち向かうことのたとえ。」として使われていたりします。
英語で「Mantis(マンティス)」
英語でマンティスとも呼ばれますし、これは学名の「Mantidae」の由来にもなっています。
マンティスはギリシャ語で「預言者」の意味を持っていて、カマキリがカマをあげて威嚇をする姿から連想されたのです。
英語では「praying mantis(プレイングマンティス)」とも呼ばれます。
prayingとは「祈り」という意味がりあます。カマキリが手を合わせているように見えるところから来ています。
別名「拝み虫(おがみむし)」
英語でも祈っているように見えることから「praying mantis」と呼ばれていますが、日本でもその姿が拝んでいるようだと「拝み虫」という別名があるんですね。
別名では他に「斧虫(おのむし)」と呼ばれることもあります。
カマキリの種類
日本で見られるカマキリは大型種ので「オオカマキリ」などをはじめ約10種類ほどです。
世界にはもっとたくさんのカマキリと、その姿も枯れ葉に擬態したものから、枝のように細長く進化したものまで多様な面白いグループです。
日本では2つの「科」のカマキリが見られます。
- カマキリ科
- ハナカマキリ科
ほとんどの種類が「カマキリ科」に分類されるカマキリですが、ヒメカマキリという種類は「ハナカマキリ科」です。
カマキリ科にはヒナカマキリという小型の種類もいるのでちょっとややこしいですね。
カマキリの特徴や生態
カマキリの前脚は鎌(カマ)のよう
カマキリの特徴はなんと言っても鎌のように発達した前脚です。
カマキリは肉食の昆虫(カマキリの捕食)
発達した前脚のカマと、その俊敏な動きで他の昆虫を捕らえて食べます。
他の昆虫が近づいてくるとゆっくりと近づいていきます。体を左右に揺らしているような動きをするのは距離を測っていると言われていますね。
射程圏内に入ったら素早くカマで獲物に襲いかかるのですが、その動きは一瞬の出来事です。
体の色も緑色などで葉っぱに似ているので、飛んでいるチョウチョを追いかけていたら、急に消えて何事かと思ってよく見たらカマキリに捕食されていたことなどもあります。
捕まえた昆虫は大アゴでもしゃもしゃ食べていきます。甲虫類などは難しいですが、他の昆虫なら硬そうなハチの仲間でも食べてしまいます。
更には、昆虫類に限らす「トカゲ」や「鳥」などを捕食している姿も観察されます。場合によってはトカゲや鳥の仲間はカマキリを食べたりするので複雑な関係です。
カマキリの目の不思議
カマキリっていつもこっちを見ていますよね。
目の中に黒い点が見えて、それが人間の瞳のように見えるのです。
しかし、実際にはこれは瞳ではなく、複眼の構造によって光が吸収されてしまった部分が黒く見えているだけなので「偽瞳孔(ぎどうこう)」と呼ばれています。
カマキリがこっちを見ているのではなく、カマキリを見ているこっち側の正面に見えるので、ずっと目があっているような気になってくるのです。
夜は目が黒い
カマキリは夜になると目が黒くなります。
カマキリの威嚇
カマキリのは危険を感じたり怒ったりすると、カマを振り上げ羽を大きく開いて威嚇行動を取ります。
体を大きく見せることで威嚇しているのですね。
カマキリの飛翔
カマキリの羽は威嚇にも使われますが、ちゃんと飛ぶこともできます。
しかし、そんなに器用に飛ぶことはできない感じです。
飼育などしていると、自分に向かって飛びついてくることがありますが、不用意に掴むとカマで挟まれたら痛いので焦ります。
カマキリに寄生する生き物
カマキリに寄生することが知られている動物がいます。
戦えば獰猛なハンターとしてかなり強いカマキリですが、戦うこともできずに太刀打ちできない生き物も存在するのです。
ハリガネムシ
寄生する生き物の中でもかなり有名ではないでしょうか。
カマキリに寄生し、その中で成長します。
カマキリのお尻を水につけると、ハリガネムシが出てくるのですが、自然の中でも水場が必要です。
カマキリを水場につれていくのに操っていると言われています。
ある夏の暑い日です。
道路に一匹のハラビロカマキリがひっくり返っていました。
クルマにでもはねられたのかと思いましたが、よく見ると近くに動いている針金のようなものが。
水場ではなくコンクリートの上で出てきてしまったので、アスファルトの熱にやられてすぐに動かなくなってしまいました。
ハラビロカマキリの写真を後から見返すとお腹の一部が傷ついています。
何かのショックであんなところを突き破って出てきてしまったのでしょうか。
オナガアシブトコバチ
カマキリの卵に自分の卵を産み付けるハチの仲間です。
カマキリの卵鞘を見つけると、その中に長い産卵管を差し込んで卵を産み付けます。
カマキリの共食い
カマキリは動いているものを餌と認識して襲いかかっています。
飼育下でも鳥のササミなどを目の前で動かしてあげると食いついたりします。
ですから同種であっても動いていたら襲ってしまうことがあります。
カマキリの卵を室内においておいたらまだ寒い時期に孵ってしまうことがありますね。
そんな時にカマキリの子どもたちを同じケースに入れているとどんどん数が減っていきます。
カマキリのメスは交尾の時にオスを食べるという話もよく聞きますが、オスであっても動いていたら餌なのです。
しかし、一般に言われているほど食べられてしまうわけでもありません。交尾を終えて次のメスを探しに行くオスも多いです。
カマキリの成長「不完全変態」
カマキリは不完全変態をする昆虫で蛹(サナギ)の期間がありません。
ですから、生まれたてのときから大人のカマキリと同じような姿をしています。
卵・卵鞘(らんしょう)
カマキリは泡状のぶくぶくを卵と一緒に出します。
それが固まったものを「卵鞘」と言って、その塊の中にカマキリの卵が沢山入っています。
幼虫と成虫
幼虫と成虫の姿は基本的に似ています。
脱皮するたびに大きくはなっていきますが、大きな違いとしては成虫なると羽ができます。
威嚇の時に使ったりする羽は成虫しか持っていませんが、幼虫のカマキリを観察するととても小さな羽がついているのがわかります。
カマキリの飼育
カマキリは肉食なので餌の確保が必要になります。
そのため飼育の難易度は少し上がります。
飼育する場合はケースの中にカマキリが止まれる足場を作ってあげることが大事ですね。
それと、餌は取ってくるのが大変な場合はペットショップなどで販売されている「ミールワーム」や小さく切った鶏肉などをあげると良いでしょう。
しかし、自然の中では色んな生き物を食べているので、そういった餌の準備もしてあげたいですね。
餌を入れすぎると、そんなに食べてないのに次の餌を狙ったり、食事を邪魔されてストレスが溜まったりするので気をつけましょう。
海外のカマキリ
日本に生息するカマキリは10種類ほどですが、海外には面白い姿や生態を持ったカマキリがたくさん生息しています。
カレハカマキリ
東南アジアに多く生息するカレハカマキリの仲間で何種類かいます。
マルムネカレハカマキリやヒシムネカレハカマキリといった種類は、胸の部分がまるで葉っぱのように広がっていて見事な擬態をしています。
上から見ると、まるで本物の枯れ葉のようで、地面を歩いているとかなりわかりにくそうです。
力もとても強く、大きな獲物でも襲って食べてしまいます。
ハナカマキリ
熱帯に住むハナカマキリは、蘭(らん)の花に擬態していることで有名なカマキリです。
幼虫の頃には薄いピンク色でとても美しく、自分自身を花に見立てて獲物を呼び寄せることがしられているので凄いのです。
成虫になると白っぽく模様もはっきりとついてきて、花の影に隠れて獲物を待つようになります。
日本のカマキリでもメスのほうが大きいですが、ハナカマキリはオスは35mm程で、メスは70mm程なのでかなり体長に差があります。
ランカマキリと呼ばれることもあります。
ケンランカマキリ
東南アジアに多く生息するケンランカマキリは緑色や赤色の光沢のある姿をしています。
日本のタマムシのようにとても綺麗に輝くカマキリで、まさに「絢爛豪華」な容姿のカマキリです。
世界のカマキリ観察図鑑
世界のカマキリをもっと見たかったら海野和男さんの写真集などおすすめです。
カマキリのQ&A
カマキリはゴキブリの仲間って聞いたんですが本当ですか?
昔はカマキリだけでなくゴキブリやナナフシもバッタやキリギリスに近い仲間とされていました。
今ではカマキリは「カマキリ目」、ゴキブリは「ゴキブリ目」として分けられています。
しかし、カマキリはバッタの仲間よりもゴキブリの仲間に特徴が似ているということが研究されてわかっています。
カマキリモドキはカマキリですか?
カマキリモドキというカマキリのような姿をした昆虫がいます。
しかしカマキリモドキはアミメカゲロウ目に含まれるカゲロウの仲間になります。
カゲロウの仲間がカマを持ってカマキリのような姿になったのでカマキリモドキと呼ばれています。
ミズカマキリは水中に住むカマキリですか?
肉食の昆虫は前脚で獲物を捕まえるの似たような進化を遂げることがあります。
水中に住むミズカマキリもそのような進化を遂げました。
水性カメムシの仲間になりますが、水中でカマのような前脚で獲物を捕らえることと、細長い体から水中に住むカマキリのようだとなったのでしょう。
※収斂進化(しゅうれんしんか)
全く違う系統の生き物がその生態から似たような進化を遂げることで、カマキリ・カマキリモドキ・ミズカマキリの前脚などもその例になります。
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