ガ類とは?
蝶(チョウ)と蛾(ガ)は似た仲間で、分類上はチョウ目の同じ仲間です。しかし、日本では一般的にチョウとガを分けているので、わかりやすいようにガの仲間をガ類としてまとめています。
日本だけでもチョウ目全体では6,000種ほどが知られています。その中でガ類は約95%を占めています。たくさんの種類がいるので、似ていて見分けるのが難しいものもいます。
蛾の名前の成り立ち
ガは漢字で「蛾」と書きますが、これは「虫」と「我」を組み合わせたものです。
ガの仲間の触角は櫛状になってるものが多いですが、「我」にはギザギザを表す意味があり、発音も一緒だったことから「虫」と組み合わせて「蛾」という漢字が生まれました。
ガ類の写真ギャラリー(蛾の図鑑)
Lepidoptera
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ガ(蛾)の種類
日本のガの仲間は5,000とも6,000とも言われていますが、今後の研究が進んでいけばもっと増えてくるでしょう。
「科」の単位でみても70を超える分類に分けられています。かなり巨大なグループであることがわかります。
日本で見られる大きい蛾
日本で見られるガの仲間で大きいものは、ヤママユガの仲間などが知られています。
ヤママユガの仲間には「ヤママユ、クスサン、シンジュサン、オオミズアオ、ウスタビガ」など、大型で模様の美しい種類がいるのです。
世界最大の蛾としても有名な「ヨナグニサン」もヤママユガの仲間です。
他にも大型の蛾の仲間だとスズメガの仲間もかなり大きいです。実際に羽を広げたところも大きいのですが、ホバリングもできる飛翔能力を得るためか、羽がついている体の作りも大きいのです。
「オオスカシバ、ウンモンスズメ、ホシホウジャク、クロメンガタスズメ」などが知られています。
変わった蛾の種類
種類がとても多いので、その中には変わった蛾や面白い生態を持った種類もたくさんいます。
美しい蛾
大きな蛾でも紹介したヤママユガの仲間のオオミズアオなどは、地味な色彩の蛾が多い中でミントグリーンの美しい色をした種類です。夜行性ですが、昼間に見つけたときなどは「森の妖精」のように見えます。
家を作る蛾
家を作る蛾の仲間もたくさん知られています。代表的なのはミノムシと呼ばれる「ミノガ」の仲間です。ミノガの幼虫は周りの小枝や葉っぱなどを自身の吐いた糸で綴ってミノを作りその中で生活をします。移動するときもミノを引きずって歩いていきます。
ここまではよく知られたものですが、メスは大人の成虫になってもミノから出てきません。
成虫になっても羽がないので飛べないのです。ミノの中でオスがやってくるのを待っているのです。
冬にだけ活動する蛾
メスに羽がない種類だとフユシャクの仲間もあげられます。フユシャクは冬に活動する蛾の仲間でメスには羽がなくオスをフェロモンで引き寄せます。
不思議な形の蛾
トリバガの仲間は羽が細く横に伸ばして止まるので一見すると蛾の仲間とわかりません。まるで十字架みたいな虫が止まっているのです。
蝶に似た蛾
アゲハモドキという、毒を持つジャコウアゲハに姿を似せた蛾の仲間もいます。かなり似ているのですが、よく見ると触角の先端が棍棒状にならないなどの蛾の特徴を持っています。
このように書き出すと止まらなくなるくらいたくさんの変わった蛾の仲間がいます。蛾というとあまり良いイメージを持っていない方も多いと思いますが、かなり面白いグループで美麗種も数多く入ることから日本にも愛好家の方がたくさんいます。
色々な色の蛾(茶色・オレンジ・黒・ピンク)
地味な色のガも多いですが、その中でも見事な擬態をしているものや、派手な色の蛾もいます。
少しだけ紹介したいと思います。
茶色い蛾
アケビコノハは幼虫も派手で有名なのですが成虫になると茶色い色になります。地味といえば地味なのですが、枯れ葉にそっくりなその姿は擬態としてかなり素晴らしいです。
蛾の仲間にはまるで自然に溶け込んでいるかのような擬態をした昆虫がたくさんいます。
オレンジの蛾
ナシイラガやビロードハマキ、スジベニコケガ、ヨツボシホソバのメスなど。大型ではウスタビガなどがオレンジ色で美しいです。
オレンジ色で面白いものでは「セスジスカシバ」がいます。
この種類はオレンジのカラーに黒い模様が入っていてスズメバチの仲間のような色彩です。
ハチに姿を似せることで身を守っています。
黒い蛾
ホタルガという昆虫は黒い羽を持っているのですが、その中に白い筋が入ったスタイリッシュな印象です。頭のところだけ赤くなっているのでホタルガと名付けられました。
他にも黒い羽が特徴で名付けられているもので「ブドウスカシクロバ」などもいます。
ピンク色の蛾
スズメガの仲間にピンク色をした「ベニスズメ」とう種類がいます。艶やかなその色彩は他の昆虫にはなかなか見られない独特なものです。
よく見られる、よくいる蛾
マイマイガという種類は定期的に大量発生のニュースが流れるなどで良く見られる種類になると思います。
幼虫の食草の幅も広く、公園などで派手な毛虫を見つけるとマイマイガの幼虫だったりします。
昼間にも見られる蛾の仲間でオオスカシバというスズメガの仲間がいます。
その見た目からファンの多い蛾の仲間だったりしますが、昼間に花にやってきてホバリングする姿などが見られることから身近な昆虫だったりします。
毒を持つ蛾の仲間
ガの仲間は毒を持っているイメージもあるかと思いますが、数千種類いる中で成虫で毒持っていると言われるものはほんの一握りです。幼虫の時期に毒を持っているものはもう少し多いですが、ここではその代表的なものを紹介します。
チャドクガ(ドクガ科)
成虫でも毒を持つ種類で割と身近にいたりするので注意が必要です。
幼虫の時から毒針毛を持っていて、大きな針ではなく細かな毛に皮膚炎などの原因となる毒成分が含まれています。
細かな毛で風にも飛ばされやすいことから、近くにいただけでかゆみなどの症状が出ることもあるようです。
ツバキやサザンカなどで集団になっている幼虫を見かけますが、園芸や学校・公園などにも植樹されていることが多いので、たくさん群れているものを見かけたら警戒したほうが良いでしょう。
しかし、ドクガの仲間は名前だけでも毒がありそうですが、チャドクガのようにどう持っているものがそんなに多いわけではありません。
イラガの仲間(イラガ科)
イラガの幼虫の仲間も毒を持つものが多く、触るとチクチクと痛むようです。
電気虫などの呼び方もあるので、結構痛いのでしょうね。
農家のおじさんと話している時に見つけた幼虫は「イライラ」と呼ばれていて、触ると危険だと言って葉っぱごと切り取って処分されていました。
イラガの仲間もすべての種類が危険なわけではないですが、触らないほうが無難でしょう。
カレハガの仲間(カレハガ科)
カレハガの仲間も毒を持っています。
全体に長い毛の生えた大型の毛虫ですが、実は毒のある毒針毛は頭の後ろの一部だけです。
怒らせると底の部分をふくらませる種類もいますが、毒のあるところを知っていれば手に乗せても大丈夫な毛虫です。
この仲間には南西諸島に生息するイワサキカレハという仲間がいます。山に入った時にうっかりと触って被害がでることがあって、地元では「ヤマンギ(山の棘)」の異名で警戒されていました。
ガ(蛾)の形態的な特徴
触角の形に特徴があります。
糸状に伸びているものも多いですが、オスでは櫛状に発達しているものがいます。これはメスが出したフェロモンを感知するために発達してきたものだからオスに多いのですね。蝶の仲間だと棍棒状に触角の先だけ丸っこくなった種類が多いです。
種類によってはオスとメスの見分けは触角がふさふさかどうかで見分けることもできます。
夜行性の種類が多いことから、地味な模様をしているものが多いです。これは夜は色にあまり頼らないためであったり、木の皮や枯れ葉に擬態しているためでもあったりします。
しかし、緑やピンクやオレンジなど、想像を超える派手な種類もいます。
一見地味なガだと思っていたら威嚇で派手な後ろ羽を見せてきて驚かせる種類もいるので、その模様も様々です。
ガ(蛾)の幼虫・イモムシ
種類も多いので、幼虫も多様です。
その形態や行動から「イモムシ、毛虫、ミノムシ、シャクトリムシ」など色んな呼び方があります。
イモムシというのはスズメガの幼虫がイモの葉によくついていたのが語源になっています。
イモムシが蝶の幼虫で毛虫が蛾の幼虫と勘違いされることがありますが、そんなことはなく蛾の幼虫にも種類によって様々なタイプが見られます。
ガ(蛾)の蛹や繭
ガの仲間は完全変態をする昆虫で、幼虫の時期から成虫に変わるのに蛹の期間をはさみます。
すべての種類が繭を作るわけではなく、スズメガの幼虫やオオバコヤガのように土中で蛹になるものもいます。
繭を作る種類では、カイコなどのように繭から絹糸を取ることで、人間生活の中でも重要な役割を担ってきた種類もいます。カイコは家畜化して絹糸を取るようになった種類ですが、野生のヤママユの仲間の繭からも糸を取ることができ「天蚕(てんさん)」と呼ばれて高級繊維として扱われています。
ガ(蛾)のことが好きになる本
蛾のデザインや模様の魅力を伝えてくれるアーティストの「蛾売りおじさん」の作品写真集です。
これがすべて刺繍で作られています。
本物を見たことがありますが、とてもすごい作品です。
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