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エリザハンミョウ(ヒメハンミョウ)

エリザハンミョウの写真

写真ギャラリー

雨が降る中のエリザハンミョウ(石川)

エリザハンミョウの交尾(石川)

オス♂はアゴでがっしりとメスを捕まえます(石川)

砂をかじる習性があります(石川)

小さなオケラを捕らえました(石川)

大きな獲物にたくさんのエリザハンミョウが群がっています(石川)

植物の影でちょっとお休み(石川)

障害物の大きな影にはたくさんのエリザハンミョウ(石川)

見分けるには特徴的な模様を覚えよう(石川)

エリザハンミョウってどんな虫?

河原や海岸に生息するハンミョウの仲間で、地面と似たような色をしているので慣れないと分かりづらい昆虫です。
ハンミョウの仲間は警戒心も強く、近づくとすぐに飛び立ってしまいます。
しかし、飛び立って着陸する動きもとても早く、ハエか何かと勘違いしてしまうほどです。

名前の由来

このハンミョウを発見して名前をつけたモチュルスキーさんが、当時のロシア領事であるゴシュケビッチ氏の奥さんであるエリザ夫人に献名して名付けられたものです。
人の名前から来ているのですね。

オサムシ科

昆虫の分類で硬い羽を持つのが特徴の甲虫目があります。その中にオサムシ科がありハンミョウの仲間はその中に含まれます(ハンミョウ科とされていることもあります)。この仲間は地表性で地面を歩いたり走ったりしているものが多く、美しい姿をしているものもたくさん知られています。ハンミョウの仲間はその中でも特に俊敏に獲物を捕らえるハンターです。
ハンミョウの種類としては「コニワハンミョウ」「ミヤマハンミョウ」「カワラハンミョウ」「コハンミョウ」「トウキョウヒメハンミョウ」などが知られています。

エリザハンミョウの写真
エリザハンミョウが地面をかじっています。
時折こんな行動を取るのですが、地面の下に隠れている獲物を探しているのかもしれません。
遊んでいるだけかもですが。

エリザハンミョウの特徴や見分け方

ハンミョウ類の中では小型で複雑な模様が特徴的な種類です。
いくつかある模様の中で、真ん中の模様が鋭く曲がっているのが特徴的です。

海辺に住んでいるものは「海浜型」と呼ばれ、「内陸型」と比べて少し大きめで模様などもはっきりと出るようです。
ここで紹介しているエリザハンミョウは全て海岸で撮影したものになりますので海浜型になるようです。

エリザハンミョウの写真
真ん中の模様が直角よりも更に強く尖っています。

コハンミョウとの違い

コハンミョウは真ん中の模様がゆるい角を描き、線がつながらず遊離することが多いです。
体長もエリザハンミョウよりも一回り大きいですね。

ハラビロハンミョウとの違い

ハラビロハンミョウはお尻側の模様の先が丸くなっています。
模様も全体的に太い印象になりますし、真ん中の模様はほぼ直角に曲がります。
体長もエリザハンミョウより大きいです。

エリザハンミョウの生態や成長

幼虫は土に縦穴を掘って近くを通りかかる他の生き物を捕らえて食べる肉食性です。
成虫になると素早く動き回って他の昆虫などを捕らえます。

餌(エサ)や食べ物

他の昆虫などを捕らえて食べますが、浜辺ではフナムシやオケラなどを捕食しているのを見かけました。
大きな獲物になると、一匹が仕留めるとたくさんのエリザハンミョウがよってきて群がっていました。
獲物の奪い合いなんかもよく行われているようですが、みんな食べるのに夢中で他のハンミョウを追い払ったりはしないようです。

エリザハンミョウの写真
浜辺にいた小さなオケラを捕食しました。
エリザハンミョウの写真
大きな獲物を仕留めると周りからたくさん集まってきてむさぼっています。

日陰が好き

夏の海岸はとても暑いです。
エリザハンミョウも積極的に獲物の狩りをしたりメスを探して走り回ったりしていますが、休むときには日陰に入っていきます。
さすがに暑いのかもしれませんね。

実際どのくらい暑いのかと言えば、浜に寝そべって撮影なんかしていると、ヒザとかヒジが火傷しそうなくらい暑いのです。
ちょどよい日陰の場所があると人気スポットになります。

エリザハンミョウの写真
明らかに日陰を狙って涼みに来ました。
大きな障害物で影ができています。よく見るとたくさんのエリザハンミョウがこの日陰に集まってきているのがわかります。

エリザハンミョウの交尾

ハンミョウの仲間は大きなアゴでメスをしっかりと捕まえて交尾をします。
メスは嫌がって体を振ったりもするのですが、しっかり捕まれると簡単には離れません。
びっくりするのは、この状態でもかなり素早く動けることです。

エリザハンミョウの写真
オスが上に乗ります。
エリザハンミョウの写真
大きなアゴでがっしりとメスを捕まえます。

分布や生息地と保護の取り組み

北海道から九州まで広い範囲で見られますが、住んでいる場所は海岸や河原や池の周りなどの湿った砂地を好みます。
海外では朝鮮半島、中国、シベリア南東部、モンゴル、チベットなどにも生息しています。

エリザハンミョウに限りませんが、海岸や河原などに住むハンミョウの仲間は護岸工事や開発などで急速に生息地を減らしています。

国のレッドデータブックにはまだ記載はされていませんが、東京、香川、広島などの地域単位では準絶滅危惧(NT)として注意されています。

鳥取砂丘での保護の取り組み

鳥取砂丘では、中心部にある池(通称オアシス)の周りにだけエリザハンミョウが生息していましたが、生息数が激減していました。
ポケモンGOなどのゲームの人気で観光客が増加した影響が考えられたために、2018年に環境省と文化庁の許可を得て立入禁止のロープ囲いをするなどの対策が取られました。
このように、各地で生息地を守るための取り組みがされています。

エリザハンミョウは飼育できる?

成虫、幼虫ともに肉食なので飼育の難易度は少し高めです。
成虫を飼育する場合はミールワームや赤虫などを与えてあげるとよいでしょう。
生魚の切り身などにも食いつきますが、傷みやすいのでこまめに取り替える必要があります。
ハンミョウは飛ぶので、ケースを開けると隙間から逃げることもあるので注意が必要です。

生息環境を再現するのが良いと思ったので、砂浜の砂を海水で湿らせて飼育ケースで観察したことがあります。
塩水なので、別の小さな容器に真水も入れて飲水にしました。
大変なのは、ハンミョウが逃げないように中にエサを投入することです。

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この記事を書いた人

村松佳優

昆虫写真家/講師/カメラマン/ムシミルの運営。

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カメラマンやイベント運営などに携わりながら、大学の講師やクリエイターの支援活動もし、次代の育成にも力を入れて活動しています!
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