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ベニシジミ(シジミチョウ科)の飼育と観察~幼虫も紅色をしているの?~

ベニシジミ飼育

春にはばたく赤い宝石
ベニシジミという、小さいながら紅色(ベニイロ)の羽を持ったとても綺麗な蝶がいます。
春先の暖かくなった頃から秋ごろまで長い期間見られる昆虫ですし、都市部や公園でも見ることができるので白いゴマダラ模様のシジミチョウに交じってよく見ることができます。
子供のころから好きなちょうちょで、赤いシジミチョウを見つけた時には宝物を見つけたような気分になっていました。

そんなベニシジミの卵を採集してから、成虫になって飛んでいくまでの観察をした記録になります。

著者紹介

村松佳優の写真
村松の撮影風景

はじめまして。昆虫写真家でWebサイト「ムシミル」の管理人の村松です。
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ベニシジミの成虫が飛んでいるのはよく見かけるのですが、幼虫をあんまり観察したことがないのでちょっと調べてみたんです。
そしたら、私が気づいていないだけでかなり身近な足元で成長していることがわかったんですね!身近なものほど気づきにくい・・・
この飼育と観察を始めたときにも、最初は近くの公園に探しに行って見つけていましたが、少し慣れたら家を出てすぐの道路脇でも見つけることができました。
そんなベニシジミの成長を観察することで、もっと色々と知って好きになれたらと思います。

ベニシジミの一生

ベニシジミは完全変態の昆虫で、卵→幼虫→サナギ→成虫と大きくなっていき、オスとメスがカップルになって卵を産みます。
日本では年に2~5回ほど発生するとされています。暖かい地域のほうが発生回数が多いんですね。
それだと成長速度もかなり早いことが想像できるので卵から1ヶ月くらいで成虫になるのではと思います。

世界に広く分布するチョウ

ユーラシア大陸や北アメリカ大陸にも広く分布するチョウで、地域によってちょっとずつ違いがあるようです。
違いがあるものを亜種と呼んでいます。
世界でも広く見られるベニシジミは、きっと色んな場所で親しまれているチョウだと想像するとなんだか楽しい気分になります。

ベニシジミの天敵

安心して飼育するためには天敵についても知っておいた方がよいですね!
成虫の天敵となるのは、昆虫を捕食するクモやカマキリやトンボなどです。
幼虫の時期には肉食性カメムシの仲間のサシガメなどに襲われることもあります。
しかし、一番の天敵は寄生蝿や寄生蜂です。
寄生する蝿では「シジミヤドリバエ、カイコノクロウジバエ、サンセイハリバエ」などが知られており、寄生する蜂では「アカシジミヒメバチ」などが知られています。
卵から室内で飼育した場合は大丈夫だと思いますが、成長した幼虫をつれてくる場合は寄生されている可能性もあります。

卵や幼虫の見つけ方

探してみつける!

見つけるときは幼虫が食べるものを知っておくと探しやすいですね!
ベニシジミの幼虫はタデ科の植物を好んで食べます。スイバやギシギシなどです。
ちなみにスイバでは葉っぱの裏がすっきりしていて、付け根の方の葉が膨らんで尖っているいる印象です。
それに対してギシギシは葉っぱの裏が網目模様になっていて、付け根の方の葉が丸っこくなっている印象ですね。

幼虫と卵

卵は地面近くに生えた葉の根本の茎の辺りに産み付けられていることが多いように思いますが、とても小さいのでよく観察しないと砂粒か何かがついているようにしか見えません。しっかりと観察して、虫眼鏡やルーペを持っていると確認しやすいです。
葉っぱに穴が開いていたら食べあとかもしれません。そっと裏をのぞいてみましょう。ワラジのような形をしたイモムシがついていたらベニシジミの幼虫の可能性が高いです!
しかし、食べあとがあっても幼虫がまだ小さい場合は、やはり肉眼で確認することは難しいです。

産卵しているベニシジミを探す

ベニシジミの成虫がよく飛んでいる公園などで産卵しているところを探すのがおすすめの方法だったりします!
飛んでいるベニシジミが地面に降りていったら、そこで産卵するかもしれません。スイバなどにに降りていっておしりを曲げるような動きをしていたら、それは卵を産み付けようとしています。ベニシジミが去ったあとに確認してみましょう!卵が見つかるかもしれません。
しかし、産むところを確認していても、卵はとても小さいので見逃しやすいのでしっかりと見ておきましょう。

ペアリングして産卵させられる?

成虫のベニシジミをに卵を産んでもらう方法を考えます。

オスとメスの違い

まずはオスとメスの違いを知っておかなくてはいけません。でないと、ペアリングできないからです。
しかし、メスはオスと比べて羽が丸みを持っているという特徴がありますが、見慣れた人でなければ判断は難しいです。
よくわからないなら、たくさん捕まえるしかなくなるのであまりおすすめはしません。

オスとメスがつながっているのを連れてくる

ベニシジミは赤色で良く目立っているのでつながった状態で、葉っぱの上で休んでいるのを見つけます。
そんなベニシジミのペアをそっと虫かごに入れておき、幼虫の食草となるスイバやギシギシを入れておくと卵を産んでくれると思います。

ペアリングさせるよりも、すでにカップルになっているベニシジミを見つける方が簡単そうですね!

幼虫の飼い方

幼虫の食べ物、餌(エサ)は?

幼虫の食草はスイバやギシギシなどのタデ科植物です。公園や畑の回りなどで普通に見ることができるのでエサの確保はしやすいですが、近所で見つけられるかはちょっと散歩がてらチェックしておきたいですね。

飼育ケースはどんなのがいい?

幼虫が小さいので、食品などが入っているような小さなプラケースでも構いません。
100均などでも売っている飼育ケース(小)でも大丈夫です。葉っぱの裏に隠れるようにじっとしていることが多く、サナギになるときにも葉っぱの裏とかを選ぶので、餌がなくならない限りはどこかに行ってしまうこともないと思います。

注意事項

・病気

変な汁を出したり、脱皮もしないのに動かなくなったら要注意です。

・農薬

スイバやギシギシの葉っぱは近所で取ってくることが多いと思います。栽培されているものではないので農薬などは基本的に散布されてないでしょう。しかし、畑の近くなどで取ってきたものだと、畑でまいた農薬が飛んできている可能性もあります。丁寧に洗って幼虫にあげた方が良いでしょう。

・寄生蜂

卵で採集してきたものから育てていればほとんど大丈夫と思いますが、卵はとても小さく見つけにくいので幼虫を捕まえてくることが多いでしょう。大きくなった幼虫ほど寄生されている可能性が高いので気をつけて下さい。室内で飼育している場合でも、プラケースならフタをする。飼育ケースなら排水溝用のゴム紐のついたネットなどをかぶせておくと安心です。寄生蜂は小さいので網目が大きいと簡単にすり抜けてくるので細かい目のものを使いましょう。

・水滴

地面に近いところで生活しているので、普段から湿度が高めのところを好んでいます。しかし、ケースに水滴がつくような場合はふき取っておいた方が良いでしょう。小さいですし、溺れて死んでしまう可能性があります。

飼育と観察記録

ではさっそく飼育していきましょう!

1日目!(5/2)

ベニシジミ
1日目!(5/2)公園を歩き回っていたら低い位置を飛んでいるベニシジミを発見!ちょっと飛んでは下の方に降りていってたので、これはもしやと思って近づいていってみました。案の定、幼虫の食草となるギシギシの葉っぱに降りていきました!ちょっとわかりにくいですが、おしりを内側にまげているポーズを確認したので産卵に違いないと確信しました!
ベニシジミの卵
1日目!(5/2)ベニシジミが産卵していたと思われる場所を確認してみると白い粒を発見!小さいので肉眼ではゴミにしか見えないのですが、目を凝らすと全体が凸凹とした複雑な模様が入っています。写真に撮って確認してみると、やはりこれは卵です!ということで卵をゲットしました!

6日目!(5/7)

ベニシジミの卵
6日目!(5/7)卵に違和感が・・・ ゴミが付いている?いや、穴が空いている!?これはもしや孵化(ふか)をしているのではないか!?一週間も経たずに孵化(ふか)してくるとは驚きましたが、中からちょっとずつ殻を食べて出てこようとしているみたいです!

7日目!(5/8)

ベニシジミの卵
7日目!(5/8)次の日の朝に確認してみると穴が大きくなって空っぽになっていました。しかし、困ったことに幼虫がどこにいるのかがさっぱりわかりません。生まれたての幼虫を確認したかったのですが、出かけなければならなかったので確認は帰宅後に持ち越すことにしました。
ベニシジミの幼虫
7日目!(5/8)帰宅して幼虫を探します。いません・・・ 葉っぱもしなびてしまっていたので、新しいものを取ってきていたのですが、見つからないという。それでも頑張って目を凝らしていたら、ギシギシに水分を与えるための濡れたティッシュに小さな何かがついているのを見つけました!優しくつついてみるとポロッと落ちたので写真を撮って確認してみました。これはまぎれもなく幼虫ではないですか!!しかしひっくり返っている・・・ 死んでしまっているのだろうか・・・
ベニシジミの幼虫
7日目!(5/8)本当は日付の変わったくらいの深夜です。数時間後にもう一度確認をしてみると、幼虫の位置が変わっている。写真を撮ってみると起き上がって歩いているではありませんか!!復活です!
これから一緒に大きくなっていこうね!!

9日目!(5/10)

ベニシジミの幼虫
9日目!(5/10)2日ほど経つとちょっと大きくなった気がします!黄色く透けた体の中にはご飯を食べた緑色が見えています。周りに見えている葉っぱの薄くなった部分は幼虫が食べた痕のようですね!

11日目!(5/12)

ベニシジミの幼虫
11日目!(5/12)一回り大きくなった気がします!前の葉っぱはしなびてしまったので新しいものをあげましょう。
ベニシジミの幼虫
11日目!(5/12)新しい葉っぱに移して数時間立った頃に確認してみるとかじった痕が見えます。気に入って食べてくれているみたいです。
ベニシジミの幼虫
11日目!(5/12)食べ痕の裏を見てみるとそこに幼虫がいました。基本は葉っぱの裏に潜んでいるみたいですね。

12日目!(5/13)

ベニシジミの幼虫
12日目!(5/13)食痕が広がっています。昨日食べていたところの続きを食べていったようですね。
ベニシジミの幼虫
12日目!(5/13)裏を見てみると真ん中の軸のところにそっとついていました。端っこみたいなところが安心するのでしょうか。

14日目!(5/15)

ベニシジミの幼虫
14日目!(5/15)食べるペースが上がっているような気がします。あれから2日でかなり食べ痕が広がってきました。
ベニシジミの幼虫
14日目!(5/15)裏側から薄皮一枚残して表面だけ食べていくようですね!
ベニシジミの幼虫
14日目!(5/15)夜に確認してみると離れたところも食べ始めたようです。ちょこちょこ移動しながら食べていくのですね。

15日目!(5/16)

ベニシジミの幼虫
15日目!(5/16)あちこちに食べ痕が広がっているのでかなり動くようになってきたようです。
ベニシジミの幼虫
15日目!(5/16)やっぱり裏でのんびり休んでいました。

19日目!(5/20)

ベニシジミの幼虫
19日目!(5/20)数日経つとモリモリ食べるようになったみたいです。表面をかじるだけだったのが、端っこからもしゃもしゃ食べた形になっています。
ベニシジミの幼虫
19日目!(5/20)ワラジ型のシジミチョウの幼虫らしい姿になってきました。緑が透けていてキレイな幼虫です。

21日目!(5/22)

ベニシジミの幼虫
21日目!(5/22)食べるペースが一気に上がってみるみる葉っぱが・・・。
ベニシジミの幼虫
21日目!(5/22)体も大きくなったので休める場所もありません。ごめんね。ちょっと待ってね。
ベニシジミの幼虫
21日目!(5/22)もう真ん中のかたそうな軸しか残っていません。。。
ベニシジミの幼虫 ケース
21日目!(5/22)新しいギシギシの葉っぱをとってきました!ケースの中にはこのように入れています。

26日目!(5/27)

ベニシジミの前蛹
別個体の前蛹。少し縮んだような形ですが、もともとこんな感じのワラジ型のイモムシなので雰囲気はあまり変わりませんね。しかしよく見ると葉っぱにくっついていられるように糸を体にかけているのがわかります。
ベニシジミのサナギ
26日目!(5/27)気がついたら蛹になっていました!葉っぱに似た色の緑色のサナギですね。
ベニシジミのサナギ
26日目!(5/27)左が頭側ですが、オレンジの点があります。なにかついているのかと思ったのですが、サナギのデザインのようです。なんだか不思議。

27日目!(5/28)

ベニシジミのサナギ
27日目!(5/28)上から見たらこんな感じです。ちょっと茶色みが出てきたベニシジミのサナギですね!

34日目!(6/4)

ベニシジミのサナギ
34日目!(6/4)一週間くらい経ちましたら、全体的に茶色の蛹になっていました。
ベニシジミのサナギ
34日目!(6/4)背中の真ん中くらいの色が濃くなってきています。もしかして羽化の準備に入ったのでしょうか。
ベニシジミのサナギ
34日目!(6/4)蛹になってから8日目で、蛹になった葉っぱもさすがにしおれてしまいました。

35日目!(6/5)

ベニシジミのサナギ
別個体。ベニシジミのサナギの羽化直前の様子。全体が真っ黒になって下の方には赤い部分が見える。ベニシジミの羽がサナギの中で出来上がっている。
ベニシジミのサナギ殻
35日目!(6/5)羽化の瞬間は見逃しました。抜けた痕の殻です。
ベニシジミのサナギ殻
35日目!(6/5)頭と背中のところがパカっと割れて出てくるのですね。
ベニシジミ
35日目!(6/5)ベニシジミの成虫です!羽化したての見事な色彩ですね!無事に育ってくれてありがとう!

ベニシジミの飼育おさらい

卵を採卵してから35日で成虫になって大人の仲間入りです!
蛹になってからは9日で羽化したので、目安として一週間から10日くらいで羽化すると覚えておくと良さそうです。
小さなプリンカップでじゅうぶん最後まで育てることができました!
ピンクの入った幼虫にはならなかったです。幼虫時代はずっと緑色でした。
またピンクっぽい幼虫も見てみたいですね。
また飼育にチャレンジしていきたいです!

他にも飼育したチョウチョを写真をたくさん使って紹介しているので見てください!

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この記事を書いた人

村松佳優

昆虫写真家/講師/カメラマン/ムシミルの運営。

昆虫の面白い!魅力たっぷり!
たくさんの人にそれを知ってもらうことで、人も昆虫もよりよい未来を築いていけたらと思ってこのサイト「ムシミル」を運営しています。

カメラマンやイベント運営などに携わりながら、大学の講師やクリエイターの支援活動もし、次代の育成にも力を入れて活動しています!
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