セセリチョウ科とは?
世界におよそ3,500種類ほどが生息していますが、名前のついていない種類も多いようでまだまだ増えそうです。小型~中型の種類が多いグループです。チョウの中では一風変わった雰囲気を持っていて、英語では「skippers(スキッパーズ)」と呼ばれ、俊敏(しゅんびん)に花から花へ移る姿がまるでスキップしているように見えるところから呼ばれています。
セセリチョウの仲間の図鑑(写真ギャラリー)
※クリックすると各ページに飛べます。写真と詳しい説明があります。
セセリチョウの名前の由来(漢字・英語)
漢字で「挵蝶」
セセリチョウの名前の由来は「せせる」からきています。せせるとは、尖ったもので突き回すことを指す言葉で、セセリチョウの仲間が花のミツを吸う時に口吻を突き立てながらミツを吸っている様子から名付けられました。
台湾でも「挵蝶」の漢字が使われています。
英語で「skipper butterfly(スキッパー バタフライ)」
スッキプというと、ぴょんぴょん飛び跳ねているところを想像すると思います。
セセリチョウの仲間は素早く力強い飛び方をします。とても素早く花から花へ飛び移るように飛ぶので、その様子からスキップしているみたいだと名付けられました。
skippers(スキッパーズ)とも呼ばれます。
かわいい顔をしているセセリチョウ
一見すると他のチョウの仲間とは雰囲気が異なりますが、頭が大きいというのも大きな違いになります。
お目々もくりくりしていてとてもかわいい顔をしています。
頭部から体にかけての幅も太いのでガの仲間と勘違いされることもありますが、チョウの仲間に分類されています。
セセリチョウの種類
日本では30~40種類程度が知られていますが、世界では3,500種類ほどが確認されています。チョウの仲間は人気も高く研究は進んでいる方なのですが、セセリチョウの仲間は学名がついていないものも多く、5,000種類は超えるのではないかと言われています。
セセリチョウの仲間の中でも「亜科」と呼ばれるグループに分けられていて、日本で見られるものは4つに分けられています。
- アオバセセリ亜科(アオバセセリ、キバネセセリ、オキナワビロウドセセリなど)
- チャマダラセセリ亜科(チャマダラセセリ、ミヤマセセリ、ダイミョウセセリなど)
- チョウセンキボシセセリ亜科(ギンイチモンジセセリ、タカネキマダラセセリなど)
- セセリチョウ亜科(アカセセリ、キマダラセセリ、ホソバセセリ、チャバネセセリ、オオチャバネセセリ、イチモンジセセリなど)
- ピロピゲ亜科(日本にはいない)
- トラペジテス亜科(日本にはいない)
アオバセセリ亜科では、青い羽の美しいアオバセセリが代表的ですが青く無い種類もいます。羽が青いからではなく、他の形態や活動の特徴から似た仲間として分類されているんですね。
セセリチョウ亜科は、セセリチョウの仲間の中でも多くの種類を含むグループです。
セセリチョウの特徴
他のチョウ類と比べて、頭部が大きく体は短く太い印象です。
体が太いのは敏捷に飛ぶためのもので、その高い飛翔能力で花から花へ行きかう姿は英語でスキッパーズと呼ばれるような由来にもなりました。
触角の位置が離れているのもほかのチョウ類と違う点です。触角ですと、チョウ類は先が膨らんだ棍棒状の先端になるのですが、セセリチョウの仲間の触角は先が膨らみながらカギ状の形をしています。
セセリチョウの生態(幼虫・蛹)
幼虫(食性)
セセリチョウの幼虫は、ススキやササなどのイネ科の植物を食べるものが多いです。
ミヤマセセリなどは生息場所の影響もありますが、コナラやクヌギなどのブナ科植物を食べます。
幼虫は巣を作る?
セセリチョウの幼虫は葉を綴って巣をくるものが多いです。
種類によって、葉を折りたたんで巣にしたり、筒状に巻いて巣にしたりするのですが、みんな器用ですね。
巣の中で動きやすいように頭部が少しほっそりとして幼虫が多いのも特徴です。
ミヤマセセリなど、何種類かは頭が真ん丸に大きくなっているタイプもいます。
蛹(サナギ)
セセリチョウは体が太くズングリした印象なのですが、蛹は細長い感じになるものが多くちょっと不思議です。
有名なセセリチョウの幼虫
セセリチョウの幼虫で一際有名なイモムシがいます。
「アオバセセリの幼虫」です。
緑色の体をして、巣を作ったりするのでシンプルな青虫型をしているものが多いのですがアオバセセリだけは雰囲気が異なります。
黄色と黒のシマシマ模様に真っ赤な頭部。その頭部にはナナホシテントウのような黒い模様が入っています。
とても目立つ幼虫で美しいので人気もあります。
北海道のセセリチョウ
北海道に言ったら見てみたい種類のセセリチョウはどんなものがいるでしょう?
キバネセセリ
北海道から九州に生息。北海道では普通に見られるセセリチョウですが、九州、四国、本州では見られなくなってきている地域も多いようです。
カラフトタカネキマダラセセリ
北海道に生息。北海道の東に寄った地域では普通に見られるようです。
カラフトセセリ
北海道に生息。1999年に発見された外来種で、馬の飼料として輸入された牧草に運ばれてきたとされています。
ヒメチャマダラセセリ
北海道のアポイ岳周辺に生息。生息範囲も狭く、環境の変化により数を減らしている種類です。絶滅危惧種に指定されているだけでなく種の保存法により保護されています。
沖縄(南西諸島)のセセリチョウ
オキナワビロウドセセリ
南西諸島に生息。飛翔力・移動性が強いようで九州まで分布を広げそうです。
テツイロビロウドセセリ
南西諸島の西表島に生息。1974年に初めて記録されてから定着しているようです。
タイワンアオバセセリ
南西諸島の八重山に生息。九州、本州でも記録はありますが一時発生か迷チョウのようです。冬期に当たる12~2月頃に多いセセリチョウです。
コウトウシロシタセセリ
南西諸島の石垣島、西表島に生息。もともと数はそんなに多くないようです。
オオシロモンセセリ
南西諸島に生息。減少傾向で注意が必要な種類のようです。
クロボシセセリ
南西諸島~九州南部に生息。1973年に石垣島で発見されてから分布を広げて、九州の南部でも見られるようになりました。他のセセリチョウでは白くなる紋が黒い模様になっているのが特徴的なセセリチョウです。
アサヒナキマダラセセリ
南西諸島の石垣島、西表島に生息。高山性のセセリチョウで、発生する範囲が狭く絶滅危惧種でもあります。
ネッタイアカセセリ
南西諸島に生息。石垣島、西表島などでは割と見られるセセリチョウです。
ユウレイセセリ
南西諸島に生息。八重山で普通に見られる種類でしたが少しずつ分布を広げ沖縄本島などにも生息域を広げました。
ヒメイチモンジセセリ
南西諸島に生息。水田の減少や農薬の影響で数を減らして絶滅危惧種に指定されています。
トガリチャバネセセリ
南西諸島に生息。世界的に見ると分布の北限にあたる種類です。
バナナセセリ
南西諸島に生息。1971年に米軍によって日本に持ち込まれたとされている外来種です。