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ヤマトシジミを幼虫から飼育と観察!食草の餌(エサ)はカタバミで育てました!

ヤマトシジミの飼育のバナー画像

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ベランダに植えた覚えのない植物がたくさん生えてきます。
雑草になるので取ってしまってもよいのですが、そのままにしていたら色んな昆虫もやってきます。
そんなことを期待して残しておいたら「カタバミ」にヤマトシジミという名のチョウの幼虫がついていました!
この記事では、シジミチョウの幼虫を飼育して成虫になるまでを観察した様子を紹介しています。

著者紹介

村松佳優の写真
村松の撮影風景

はじめまして。昆虫写真家でWebサイト「ムシミル」の管理人の村松です。
ムシミルは昆虫の写真を通して自然に関心を持つ人がたくさん増えるようにと運営しています。写真を使って昆虫の紹介をしたり、昆虫の「面白い!」に関心を持つ人が増えてほしいと思っているので、飼育などの記事も書いています。

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ヤマトシジミの成虫はたくさん見かけるのに、野外でシジミチョウの幼虫を探しても見つけるのが難しかったりします。
葉っぱの裏などにいるので見つけにくいのです。
しかし、ベランダの鉢のカタバミに食痕(しょくこん)を見つけたので、それを頼りに探すと二匹も見つけることができました!

外だと寄生蜂などにやられる可能性もあるので、その幼虫を室内で飼育観察することにしました。

ヤマトシジミの一生

ヤマトシジミは蝶の仲間で、分類的には「チョウ目」の中の「シジミチョウ科」に分類されます。

完全変態をする昆虫で「卵」「幼虫」「蛹(サナギ)」「成虫」と段階を踏んで成長していき、幼虫から成虫に大きく姿を変えることが特徴的です。
ヤマトシジミは人為的環境に適応し、都会でも見られる蝶なので、数はたくさん見るのですが幼虫を見かける機会は多くありませんね。
ワラジ型の姿をした幼虫の姿にびっくりする人もいるのではないでしょうか?

越冬態(冬越し)は不定なので、暖かい地域では成虫で越冬しているのかもしれません。

春先から見られ、年に数回発生する蝶なので秋まで成虫の姿を見ることができます。
産卵された卵から生まれてきた幼虫はワラジ型をしており、カタバミの葉っぱを食べて育ちます。
3回~4回ほどの脱皮しながら大きくなっていき、蛹(サナギ)になって成虫になる準備をします。

サナギはマメ型の形をしていて、帯で体をくくりつける「帯蛹型(たいようがた)」のサナギです。
姿が大きく変わることが感動的な羽化を経て、空を飛ぶための羽を持てるようになるのですね。

飼育と観察記録

ではさっそく飼育と観察をしていきましょう!

4/16 ヤマトシジミの幼虫を発見!

ベランダに勝手に生えてきた「カタバミ」を眺めていると、葉っぱがくしゃっとなった不思議な部分を発見しました。
なんだろうと思って覗き込んでみると、シジミチョウの幼虫がついていたので観察をはじめました。

ヤマトシジミの飼育の写真
4/16 幼虫を見つけたのは良いですが、カタバミごと取り込んでみると、なんだか硬直しているように見えます。
死んでいるのではないかと心配になりました。
ヤマトシジミの飼育の写真
4/16 取り敢えず観察を続けるのにプリンカップに入れて観察することにしました。(フタもあります。小さな穴を何個かあけています。)

ヤマトシジミの幼虫の脱皮

少し時間が経ってから見てみると、なんと脱皮をしているではありませんか!
硬直しているように見えたのは、脱皮の準備をしていたからだったのですね!

ヤマトシジミの飼育の写真
4/16 気がついたら脱皮を始めていました。お尻の部分は葉っぱにくっついた状態でゆっくりと古い皮を脱いでいきます。
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4/16 少し時間が経つと、かなり脱げてきました。ゆっくりと這い出てくるように動いています。
ヤマトシジミの飼育の写真
4/16 完全に抜け出ることができたようです。移動をはじめましたが、イモムシの顔を確認することができました!かわいいですね!

4/17 餌(エサ)を食べているのを確認

ヤマトシジミの飼育の写真
4/17 脱皮してからはおとなしかったのですが、次の日に様子を見ているとカタバミの葉がかじられていました。しっかりとご飯を食べているようです。
蝶の幼虫は脱皮した皮を食べてしまうものも多いのですが、脱いだ皮はほったらかしにしているようです。

もう一匹イモムシ発見!

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4/17 新しい餌(エサ)を取るのにベランダでカタバミを見ていました。カタバミを食べた痕がたくさんついていたので、他にもいるのではないかと調べてみると、もう一匹を見つけることができました!
こっちの幼虫のほうが大きいです!葉っぱについているのではなく、ご飯を食べる時以外は茎の部分などで待機していることがわかりました。
しかし、これは本当に見つけにくい・・・。

ヤマトシジミのイモムシの餌(エサ)の与え方

餌(エサ)となるカタバミはベランダの鉢に勝手に生えてきたものを使っているので確保が簡単です(笑)

ヤマトシジミの飼育(カタバミ)の写真
カタバミを餌(エサ)としてあげるときはこんな感じにしています。カタバミは摘むとすぐにしなびてくるので、ティッシュをちぎったものをちょっと湿らせて、小さく切り口に巻いています。濡らしすぎるとびちゃびちゃになってしまうので気をつけましょう。

4/18 餌(エサ)を食べているのを確認

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4/18 大きめのイモムシも一緒に入ったので葉っぱが一気に少なくなっていきます。糞もたくさん落ちているのでかなり食べてますね!
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4/18 小さなイモムシもしっかりと食べてウンチをしています。

4/20 さらに一匹発見!

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4/20 餌(エサ)は毎日変えているのですが、夕方にベランダに出るとまた一匹発見しました!
休むときは葉っぱから離れた茎の部分によくいるみたいですが、茎の部分を探しても見つからないことが有るので、お腹が空いていないときは結構地面近くまで降りて隠れているのかもしれません。

4/22 シジミチョウのイモムシが動かなくなりました!?

大きくなっていたイモムシはプラケースの天井に張り付いて動かなくなっていました。
たまたま休んでいるのか、もしかしたら脱皮かもしれないと思って定期的に観察してたらサナギになる準備だったようです。

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4/22午前 天井に張り付いていたヤマトシジミの幼虫。
元気なのか元気がないのかよくわからないので心配になります・・・。
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4/22夕方 時間が経ってから確認すると、糸が一本体にかかっているのがわかります。どーやらサナギになる準備をしていたようで「前蛹(ぜんよう)」の状態みたいです。
※クリックで大きくなるので体にかかっている糸を確認してみてください。右の方四分の一くらいのところです。
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4/22夕方 くっついているところを裏側から確認してみました。自分がサナギになるところに糸を吐いて台座を作っているのですね。プラケースのフタについているので実際には宙吊りですし、落ちないようにしっかりと準備をしてサナギになるようです。
こういったところを裏から観察ができるのは飼育しているときだけですね!

プリンカップの掃除

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4/22 フンはできるだけ取り除いたほうが良さそうです。新しい葉っぱを入れるだけにしていましたが、フンの一部にカビがはえてきました。
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4/22 キレイに掃除をして新しい餌(エサ)とともに幼虫を入れてあげました。
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4/22 うちにやってきた三匹目の幼虫もここから動きません。もしかしてうちに来たばかりだけど蛹になるのかな?
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4/22 他より小さな一番最初に家にやってきたヤマトシジミの幼虫。元気な証拠にフンもして、すくすく育っています。

4/23 サナギになりました!

ヤマトシジミの幼虫の一匹がサナギになりました!
プリンカップの天井についていたやつではなく、最後に家にやってきたイモムシから蛹になったのでちょっとびっくりです。

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4/23 葉っぱでじっとしていた幼虫からサナギになりました!
葉っぱが体にまとわりついて可愛そうと思って一度触ったのですが、その時に蛹になる時の糸を切ってしまったようです・・・
可愛そうなことをしましたが、このまま見守りたいと思います。
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4/23 サナギを上方向から見た感じは、このように少し模様が入っています。
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4/23 シジミチョウの仲間らしい「マメ型」のサナギです。
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4/23 天井にくっついている幼虫に変化はありません。

4/24 天井についていたイモムシもサナギに!

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天井についていた幼虫もサナギになりました!天井で動かなくなってから、なかなかサナギにならないので心配していましたが、とりあえずほっとしました。

5/2 蛹(サナギ)の色に変化!

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5/2 蛹になって10日経つと色が変わってきました。
全体的に薄くなって羽になると思われる部分は白く変化しています。
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5/2 全体も黒い点々が見えるようになっているのおは成虫になった時の模様かな?
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5/2 天井のサナギもほんのりと色が薄くなって羽の部分が白っぽくなってきています。
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5/2 まだ幼虫だった一匹は様子が変です・・・。黒いシミのようなものが・・・
死んでしまうのでしょうか・・・。

5/3 羽化するのも間近かな?

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5/3 色が濃くなってきました。特に目の部分が黒くなってきたのでそろそろ羽化しそうです!
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5/3 天井のサナギも目の部分が濃くなってきました。

5/4~5/5 ヤマトシジミの羽化!

サナギになって12日目の5/4~5/5にかけてサナギが羽化しました!
その様子を追いかけたので紹介します。

その前に最後の幼虫ですがダメみたいです・・・

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黒いシミが広がってきました。寄生されているのでしょうか?
まだ生きていますが、もうダメそうです・・・

5/4 AM10:11 羽化の兆候が

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5/4 AM10:11 色が濃くなってきました。羽の模様もうっすらと透けています。

5/4 PM01:25 黒い部分がかなり増えました

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5/4 PM13:25 羽や頭の部分などがすべて黒くなってきました。目で見ていると真っ黒にも見えたのですが、写真に撮ってみるとシジミチョウのブルーがきれいに見えています。

5/4 PM03:17 2時間ほど経ってもあまり変わりません

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5/4 PM15:17 羽のブルーが少し増えたような気がしますが、そんなに大きく変わりません。ここからが長そうです。

5/4 PM06:18 サナギの中の顔

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5/4 PM18:18 お腹の部分に当たる右側も少し濃くなってきましたがそんなに大きくは変わりません。
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5/4 PM18:59 見る角度を変えると、シジミチョウの顔ができているのがわかります。

5/4 PM11:35 深夜になっても大きな変化はなし

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5/4 PM23:35 朝から観察をはじめて夕方には羽化するとフンでいたのですが予想を大きく外して深夜になってしまいました。

5/5 AM01:18 サナギの殻がはずれてきた

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5/5 AM01:18 色が濃くなってきたのに、今度は薄くなってきました。よく見てみるとサナギの殻が内側から外れてきているようです。
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5/5 AM01:18 少しずつ殻が浮いてきているのがわかります。

5/5 AM02:46 かなりサナギの殻が浮きました

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5/5 AM02:46 からの中で羽もはずれたようです。
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5/5 AM02:46 全体がはずれたので、空気の層が入って全体に白っぽく見えます。

5/5 AM03:47 羽化を待つだけ

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5 AM03:47 後は羽化を待つだけですが、朝から観察をはじめて、夕方には羽化する予想を外して朝方コースのようです。

5/5 AM07:23 ヤマトシジミが羽化しました!

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5/5 AM07:23 6時半くらいまで粘っていたのですが、小一時間ほど居眠りしたらヤマトシジミの羽化は終わっていました・・・。
カメラのレンズの上で羽根を伸ばしていたようです。
出てくる所を見逃したのは残念ですが、無事に羽化してくれて嬉しいです。
お疲れ様!!
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5/5 羽化したてのヤマトシジミは羽もとても美しいですね!
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5/5 少し羽を広げたところを見ると、白身を帯びて全体が青くなっているのでオス♂のヤマトシジミです。メス♀だと黒っぽくなり青い部分も少ないです。
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5/5 蛹の抜け殻。
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5/5 羽化した後には排泄物を出します。

5/6 もう一匹のヤマトシジミも羽化しました!

一日遅れでもう一匹も気がついたら羽化の準備に入っていました。
サナギになるのに少し時間がかかったので、もう少し後だと思っていたのでびっくりです。

最後の幼虫は死亡しました・・・

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黒いシミが見えたと思ったら、そこからシミは広がっていき、最後には干からびて死んでしまいました。
死亡の原因として考えていたのは、最初は寄生されていたのかと思ったのですが、それだとこんな風に干からびないと思います。
はっきりとはわかりませんが、何かの病気にかかって死んでしまったのだと思っています。

5/6 AM3時頃 ヤマトシジミが羽化!

プラケースの天井で蛹(サナギ)になったヤマトシジミも羽化してくれました!

羽化の瞬間は見逃しましたが、羽化したての羽の柔らかさを感じることができたのが興味深かったですね!

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5/6 全体が白っぽくなり、殻が浮いている状態です。これはいつ出てもおかしくないですが、前回の個体が朝の7時頃だったので、ちょっと寝てすぐに起きて観察しようと考えていました。

ちょっと寝て起きて観察するのに、寝る準備をしていたら、その間に羽化してました(笑)
残念な気持ちもありますが、まだ羽がくしゃくしゃのシジミチョウを見たら愛しくなったので、今しか撮れないその様子を撮影させてもらいました。
(寝なくてよかった・・・)

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5/6 気がついたらフタの端に捕まって羽を伸ばそうとしていました。
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5/6 ぶら下がれる場所に移動させてあげようと一回手に乗せたのですが、羽化したての羽は重力に逆らうこともできません。とても柔らかい不思議な素材に見えます。
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5/6 チョウの仲間は羽化したらしっかりと羽を伸ばすのに、羽を下にして重力で伸ばしている感じなんですね。クシャクシャな羽も下に向けていたらしっかりと伸びています。このまま捕まって過ごせるところに移動させました。
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5/6 お昼前には羽もしっかりと固まって飛ぶこともできるようになりました。もう羽を上に向けても大丈夫です!

※二匹が羽化して一匹死亡で更新終了です。

感想とまとめ

ヤマトシジミはとても良く見るチョウの仲間ですが、このように成長の様子を観察したのは初めてです。
野外でも幼虫は隠れていることが多いので、その姿がどのようなものなのかを知っている人も少ないのではないでしょうか?

幼虫は大きくなるにつれて食べる量もかなり増えますが、それでも小さいチョウなのでしれています。
このくらいの食事で成虫にまでなれるですから、都会の道端に生えているちょっとしたカタバミでも成長できるんですね。

見どころは、サナギになる様子と羽化する時のサナギの変化が生命の神秘を強く感じることができます。
今回は特に深夜まで観察することになったので大変ですが、機会があればぜひ見て欲しいものです。
こんな大きな変化が私達の知らないうちに足元でおこなわれているのですから、びっくりしますね!

他にもいろんな昆虫を飼育・観察しているのでよかったら見てくださいね!

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この記事を書いた人

村松佳優

昆虫写真家/講師/カメラマン/ムシミルの運営。

昆虫の面白い!魅力たっぷり!
たくさんの人にそれを知ってもらうことで、人も昆虫もよりよい未来を築いていけたらと思ってこのサイト「ムシミル」を運営しています。

カメラマンやイベント運営などに携わりながら、大学の講師やクリエイターの支援活動もし、次代の育成にも力を入れて活動しています!
詳細なプロフィールはこちらのページで御覧ください。
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