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ヤシオオオサゾウムシってどんな虫?
日本では1970年代から確認されるようになった外来種の大きなゾウムシの仲間です。
名前からも想像できるように、ヤシを食べて育つのですが、数が多いとヤシを枯らしてしまう原因にもなるようです。
地味な色彩のゾウムシが多い中で、赤いボディはとても目立ちます。
大きさも、オオゾウムシを超える体長なので迫力がありますね!
幼虫がとても美味だということで話題にのぼったりもする昆虫です。
オサゾウムシ科
昆虫の分類に硬い羽を持つことが特徴の甲虫(コウチュウ)目があります。ヤシオオオサゾウムシはその中の「オサゾウムシ科」の一種です。この仲間にはオオゾウムシやコクゾウムシなどの昆虫が含まれています。
吻(ふん)と呼ばれる、口の部分が長く発達している種類が多く、その容姿が哺乳類の象(ゾウ)のような姿なので名付けられています。
ヤシオオオサゾウムシの特徴
長く伸びた吻(ふん)が特徴ですが、ゾウムシの中では体長も大きく色彩も目立つので見間違うことはなさそうです。
日本でも定着しているので、日本最大のゾウムシです。
体の模様の変化は色々とあるようで、全体が黒っぽくなる個体も見つかるようです。
背中側は鮮やかで、マットな質感の赤色(朱色かな?)の色彩を持っていますが、裏面はつやつやとした光沢感のある黒色ボディです。
生態
食べ物や餌(エサ)は?
ヤシオオオサゾウムシはヤシに産卵して、幼虫はその中を食べて成長します。
飼育下ではイモ類なども食べるようです。
成虫もイモの中に潜っていたり、幼虫もイモをかじって潜っていました。
成長(卵・幼虫・羽化・成虫・寿命など)
卵
自然下ではヤシの木に産卵します。
飼育観察してたら、一緒に入れていたヤシガラに産卵痕を見つけることができました。
幼虫
無脚のイモムシですが、鶏の卵くらいのサイズ感があります。
ヤシのことを「パーム」ともいうので、幼虫は「パームワーム」と呼ばれることも。
他にも「サゴヤシ」というヤシにもつくことから「サゴワーム」との呼称もあるようです。
脚がないので、体をくねらせるというか、伸び縮みするような感じで動きます。
本来はヤシの中を食べながら、成虫になるまで外に出ることはないので、脚は邪魔なだけだったんでしょうね。
繭(まゆ)
蛹(サナギ)になる時に繭を作ってその中で成虫になります。
蛹(サナギ)
本来は繭玉の中で羽化するのですが、繭玉を作らずにサナギになったものがいました。
ちょうど良かったので観察させてもらうことに。
羽化(うか)
成虫
寿命
ゾウムシは成虫で数年活動するものもいますが、ヤシオオオサゾウムシの成虫寿命はそんなに長く無いようで、2~3ヶ月程度です。
外来種としての影響
ヤシを枯らしてしまうことで侵入生物として警戒されている昆虫です。
幼虫が大きいということもありますが、中身を食べられて枯れる原因になることがあります。
更には「フザリウム菌」という、ヤシ立枯れ病を起こす原因になる菌を媒介するようです。
対処の方法としては、薬剤をまいたり、被害にあったヤシは焼却処分してしまうなどの方法が取られるようです。
和歌山の南部に行った時に訪れた施設で、葉っぱのまったくついていないヤシを見かけたことがありました。
その施設の人の話を聞く事ができたのですが、数年前にヤシオオオサゾウムシが大量に発生して、その時に葉っぱは全部落としてしまったのだそうです。
養殖と栄養問題の解決
ヤシオオオサゾウムシについて調べていると興味深い記事に出会いました。
母と子の保健医療向上を目指すNPO法人の活動の一部で、ラオスでの栄養問題の解決に向けて地元の人にヤシオオオサゾウムシの幼虫を養殖する技術を伝えるというものです。
ゾウムシ養殖パイロット農家の第一歩(ISAPH/アイサップ)
https://isaph.jp/archives/1773
記事を読んでみると、栄養価的にも、育てるコスト的にも、文化的にもうまくできているなぁと感心するものでした。
日本ではまだ歓迎されるような昆虫ではないのですが、世界では人との関わりの中で重要な役割を担う昆虫かもしれません。
分布や生息地
もともとは、東南アジアやオセアニアなどの熱帯地域を中心にかなり広い範囲で世界的に分布している昆虫です。
日本には外来種として沖縄に侵入してきたようですが、今では九州や本州の一部の地域でも見られます。