アリはとても身近な昆虫で、庭などを探すだけでも数種類から十数種類を見つけることができます。
地中に巣を作っているアリだと、そこに餌(エサ)を運んでいくところを見つけると、時間も忘れて眺めてしまいます。
そして、一匹の単独ではなく集団で生活をする「社会性」を持った昆虫であることは大変興味深くて面白いポイントです!
日本だけでなく、世界にはたくさんの種類のアリがいて、私達の驚くような生活をしているものも多いです。
そんなアリのことをまとめていきます。
著者紹介
はじめまして。昆虫写真家でWebサイト「ムシミル」の管理人の村松です。
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アリとは?
昆虫の分類でハチ目アリ科のことを指します。
アリはハチの仲間だったのですね!
日本では280種類ほどのアリが知られており、世界ではなんと11,500種類を超えるとされています。
大型のアリでは3cmほど合ったりしますが、小型になると数mmほどの小さな種類も多いです。
土の中や樹上に巣を作り、その中で女王を中心としたコロニーを作って生活をする「社会性昆虫」で集団で生活をするために進化を遂げてきました。
アリの名前
アリの名前はみんな知っていますが、その由来はいったいどこから来たのでしょうね?
アリの由来
多くの説があってはっきりとはしないようですが、「歩く(アリク)」からきたとする説や、ありの体に前後のくびれが「有(アリ)」からきたとする説などがあります。
漢字で書くと 「蟻」
「蟻」の漢字の由来は、その統率された社会性から来ています。
一列に並んで行進をしたり、共同生活を営んでいることから「行儀の良い」の意味を持つ「義」の字が「虫」につけられて「蟻」となりました。
アリは英語で「ant(アント)」
アリを英語で「ant(アント)」と言います。
学名:アリ科「Formicidae」
アリ科の学名は「Formicidae」です。学名はラテン語でつけられます。
アリの形態
全体
アリはハチの仲間なのでパッと見はとても似ています。
アリも女王が結婚飛行などするときには羽がつきますが、その時の姿はアリかハチか迷います。
アリ特有の特徴としては、胸部と腹部の間に「腹柄節(ふくへいせつ)」もしくは「腹柄部(ふくへいぶ)」と呼ばれる節が有り、山状に盛り上がっています。
他には、アリの仲間は単眼が消失しているものが多かったり、触角の根本の節を触角柄節(しょっかくへいせつ)と呼ぶのですが、そこが長いなどの特徴があります。
しかし、アリは小型のものが多いので野外で目視で見つけただけでは観察するのが難しいですね。
アリは「社会性昆虫」
アリは社会性昆虫として集団で生活することが知られています。
昆虫のほとんどは親が子の世話をすることはないです。一部に卵を守ったり、子守をする昆虫もいますが、大きくなるとお別れをして単独で生きていきます。
しかし、アリのような社会性昆虫は卵から幼虫の間も世話をして、大きくなった成虫はまた一緒に生活をすることで子どもたちの世話をします。そうやって大きな集団を作っていきます。
ただ集まるだけの行動ならば、生まれたばかりの幼虫や、越冬のタイミングでの集団化が知られるものもいますが、より複雑な構造と相互作用や役割があるために「社会性」という言葉が使われます。
(研究分野では「真社会性」と呼ばれたり、複雑な構造を持たなくとも社会性の言葉が使われたりもします。)
アリ社会の役割
アリの「カースト」
女王アリや働きアリなどで形態がかわることをカーストと呼びます。
卵や幼虫の状態ではこのカーストは決定されていないのですが、エサの状態や温度などがこのカーストを決定づけるために重要なようです。
ミツバチだとローヤルゼリーを与えられると女王バチになることが有名です!
女王アリ(じょおうあり)
産卵行動を取るのが一番の特徴。体は働きアリと比べても大きくなり、最初は羽を持っているので胸部が大きく発達する。産卵が一番の仕事になるので、他のことは全て働きアリに任せます。
雄アリ(おすあり)
女王と出会って子孫を残すのが仕事。羽を持つので胸部は大きく発達します。
働きアリ(はたらきあり)
働きアリには羽はなく、基本的にメスではあるけれども生殖器官は退化しているので女王アリ(雌アリ)とは区別されます。
エサの確保から、女王アリや卵や幼虫の世話などなんでもやります。
ワーカーとも呼ばれますね。
兵隊アリ(へいたいあり)
働きアリの中でも、頭部や大アゴが発達し、働きアリとは形状が大きく異なるものを兵隊アリと呼びます。敵に襲われたり、狩りをするときなどに積極的に攻撃に参加するのが兵隊アリです。
アリの「結婚飛行」
すべての種類ではないですが、アリの仲間は結婚飛行という行動が知られています。アリの巣が大きくなってくると、羽を持った次世代の「女王アリ」と「雄アリ」が育てられます。タイミングを見計らって巣から飛び立ったオスとメスは野外で出会います。女王はその後一匹で巣を作り始めて働きアリをちょっとずつ増やしていきます。
(複数の女王で生活するコロニーもあります。)
アリの食べ物
アリの仲間は種類も多く雑食性から肉食中心で狩りをするもの、草食のものまで多様です。
よく知られているものだと、アブラムシの出す甘露(かんろ)や植物のミツを集めるような種類もいますし、ジムカデやトビムシをなどの小動物を襲うような種類が知られています。
完全変態
昆虫の変態様式には「完全変態」と「不完全変態」とがあり、アリは完全変態の昆虫です。幼虫の時期は成虫とは似ても似つかない姿をしており蛹(サナギ)の期間を経て、私たちが知っているようなアリの姿へと変貌するのですが、幼虫時期にどのように育てられるかでカーストが決定します。
同じように完全変態する昆虫には、クワガタムシやチョウ、ハチの仲間などがいます。
アリの豆知識
農業を営むアリ
実は農業を営むアリがいます。ハキリアリと呼ばれる仲間は植物を取ってきて巣のなかでキノコを育てて食べるのです。彼らは5000万年も前からこの農業を続けてきました。人間が農業を始めたのは10000年ほど前なので歴史が全然違いますね!
爆発するアリ
自爆するアリがいます。外敵に教われ、仲間が危ないと思ったら自爆して仲間を守るのです。
お腹にミツを貯めるアリ
ミツツボアリと呼ばれる、なんとも美味しそうな名前のアリがいます。彼らは数が増えてくると、一部の個体をお腹が膨らんだ状態に育てます。そして、集めてきたミツをその個体のお腹に貯蔵していくのです。パンパンに膨らんだお腹を破裂させないためだと思いますが、ミツを貯蔵する個体は天井からぶら下がった状態でじっとしています。透き通ったお腹がとても美しく神秘的なのですが、ずっとぶら下がっているのは大変そうです。
アリの奴隷狩り
アリの中には他の巣を乗っ取ったり、卵や幼虫をさらってくるものがいます。そして、労働力として自分達の世話をさせます。有名なものではサムライアリというアリがいます。サムライアリの女王はクロヤマアリのワーカーを捕まえて、そのにおいを自分につけることでクロヤマアリに成りすまします。そして、巣の中に忍び込んで女王アリを殺してしまいます。その後は、女王アリのにおいを自分につけて巣をまるごと乗っ取るのです。しかし、途中でにおいが取れたり、仲間でないとわかると巣のなかは敵だらけで助かる道はありません。
日本最大のアリ
日本で最大といわれているのは「クロオオアリ」です!クロオオアリの働きアリで体長は7~12mm程。女王になると、2センチ弱ほどのサイズになります。アリの中では大型ですが、実は日本全土に生息し、近くの公園などでも見られるような普通種の昆虫です。ぜひ探してみてください!
アリの飼い方、飼育方法
アリは集団生活を営む昆虫で、観察すると面白い発見がたくさんあります。特別なものでなければ飼育は比較的簡単です!
食べ物、餌(エサ)
アリの多くは雑食性で、肉食性の強いものや、草食性が強いものなど色んな種類がいます。アリによって準備するエサは変わってきますが、最初は雑食性で色んなものを食べてくれる種類を選んで飼育するのが良いでしょう。クロオオアリやクロヤマアリなどがおすすめです。
飼育ケース
コップや瓶でも飼育可能です。穴を塞げるものでないとアリが逃げ出してしまうので注意が必要です。
小さなケースで
ちょっとお試しで飼ってみるなら、100均のプラスチックケースなども利用できます。
湿度を維持するための石膏も100均で手に入りますので、底に敷いておくと良いでしょう。
本格的なケース
アリの飼育をするための本格的なケースも売られています。自分で作るのは大変そうですし、技術も必要なので思いきって買ってしまうのが良いと思います。アリも一緒に購入すると、すぐに飼育が始められますね!
土はいるのか?
土は必要ありません。土があると観察もしにくいです。自然な感じで巣を作るところが見たいという場合はもちろん土をつかってオッケーです。
注意点としては縦に薄く広いケースを準備しないと、中のアリの様子がわからなくなってしまいます。
石膏(せっこう)を使う
アリの飼育でよく利用されるのが石膏です。
土の中で生息しているアリは乾燥に弱く、適度な湿度がないと死んでしまいます。
石膏は水分が染み込んで湿度を保つのに最適なのでよく利用されいるんですよ。
石膏を使わない場合は脱脂綿やティッシュペーパーを湿らせたものを一生に入れておくと良いでしょう。
餌(エサ)用の小皿
ケース内が汚れを防いだり、片付けを簡単にできるので餌用の小皿などは準備しておいたほうが良いでしょう。
アリの見つけ方
外に出てみてよく目を凝らしてみて下さい。あちこちでアリさんが活動しているのが見えてくるはずです。小さな公園でも10種類以上、大きな公園になると数十種類のアリが活動をしています。
お目当てのアリが決まっている場合は、結婚飛行をする時期に野外で探してみるのもよいですね!
その場合は、新女王一匹からコロニーを育てていくことになります。
巣を見つけたら、そこからアリを掘り出して女王を探さないといけません。女王を一緒に連れてこないと数が増えないからです。女王と一緒に同じコロニーの働きアリを捕まえてくると最初から集団生活の様子を観察することができますね。
購入する
探すのは慣れていないと大変です。女王を探すのも簡単に行くとは限りません。
いっそ購入してしまうのが確実かもしれません。
Ant Room Web Shop(クリックで販売サイトへ)
http://antroom.cart.fc2.com/
飼育がしやすいのに日本最大の育てがいのあるクロオオアリの販売もされていますし、ここの代表をされている「島田 拓」さんはアリの飼育では有名な方ですので安心して購入できると思います。
もっとライトに観察したい場合
販売されている観察キットを使うのが良いですよ!
色んな種類の観察キットが販売されていますが、ゲルを使ったものが見た目がキレイでおすすめです。
透けているので、穴を掘っていく様子が観察しやすいですし、このゲルがエサにもなっているので世話いらずなのです。
ただ、本格的な飼育とは異なりますので増やすことはあまり考えずに働きアリだけ入れてあげて楽しみましょう。
(このタイプは女王を入れてもあまり産卵しないようです。)
注意点としては同じ巣(コロニー)のアリだけを入れることです。違うコロニーのアリを一緒に入れると喧嘩して死んでしまいます。
以前観察していた時のツイートです☆
アリの観察
今回アリさんの女王に出会うことができたのでちょっと飼育にチャレンジしてみます!
まとめ
アリの社会は複雑で、まだ知られていないこともたくさんあります。アリの種類だけ、その生活には様々な驚きがあることでしょう。そして、そんな社会性を持って生活をしている昆虫はとても身近に存在しているのです。良かったらまた観察してみて下さい!