スズメバチ科とは?
ハチ目に含まれるグループで、毒針を持つことでも有名です。日本では30種ほど(ドロバチ類は除く)が知られています。単独の女王を中心に働き蜂が獲物をとってきて幼虫の餌とします。
スズメバチ科の種類
世界にはドロバチ亜科、サバクドロバチ亜科、ハナドロバチ亜科、アシナガバチ亜科、ハラボソバチ亜科、スズメバチ亜科の6亜科で約5,000種類が知られています。
日本には、ドロバチ亜科、アシナガバチ亜科、スズメバチ亜科の3亜科が生息し、約90種類ほどが確認されています。
(研究者によって見解が分かれているようで、ドロバチ亜科はここでは省いて「ドロバチ科」とします。ですからこのページではスズメバチとアシナガバチの仲間を紹介します。)
スズメバチ科(雀蜂科)の写真ギャラリー
Vespidae
※クリックすると各ページに飛べます。写真と詳しい説明があります。
スズメバチの仲間(種類)
スズメバチ亜科
アシナガバチの仲間(種類)
アシナガバチ亜科
名前の由来
漢字で「雀蜂」
スズメバチは、まるで鳥の雀(スズメ)ほどにも大きい蜂という意味から「雀蜂」ときています。(巣がスズメの模様みたいという説もあります)
アシナガバチは「脚長蜂」と書いて、実際に脚が長いのが特徴ではありますが、他の種類でも脚の長いものはたくさんいるのでちょっと不思議です。
英語で「hornet(ホーネット)」「wasp(ワスプ)」
スズメバチのことを英語では「hornet(ホーネット)」と呼びます。
「wasp(ワスプ)」とも呼ばれますが、こちらはアシナガバチやカリバチなど、少し広い意味で使われます。
スズメバチは「vespa(ベスパ)」と呼ばれているのを聞いたことがあるかもしれません。これはスズメバチ属を意味する学名からきていてラテン語が由来になっています。
生態や特徴
スズメバチやアシナガバチの大きさ
スズメバチ、アシナガバチを含めて一番大きいのはなんと言っても「オオスズメバチ」です。女王蜂だと50mmを超えるサイズのものもいて、日本で最大。さらには世界で最大のスズメバチです。
アシナガバチの仲間ではセグロアシナガバチとキアシナガバチが大きい部類ですが、それでも30mmくらいで体もほっそりとしているため、スズメバチと比べるとかなり小さい印象です。
スズメバチの仲間の中には「クロスズメバチ」という仲間もいるのですが、その仲間はさらに小型で小さいものだと10mm程度の大きさになります。
活動の時期
春に越冬から目覚めて秋ごろまで活動をします。
暖冬だと12月頃でも生き残ったスズメバチが見つかることがあります。
スズメバチの仲間の一生
スズメバチ、アシナガバチのほとんどの種類で、春になると女王蜂が越冬から目覚めて活動を始めます。
最初は女王蜂が一匹で巣作りを始めるのですが、夏にかけて巣を大きくしていって働き蜂が増えてきます。
働き蜂が増えると、巣作りや幼虫の世話がはかどるので数も一気に増えていき、秋ごろには次世代の女王蜂を育てます。
その頃には女王蜂も死んでしまい、働き蜂も減っていって巣は崩壊します。
越冬(えっとう)
新たに生まれた女王蜂は、大抵の場合一匹で越冬します。オオスズメバチなどは一匹で越冬しているのがよく見つかります。
集団で越冬するものもいて、キアシナガバチやムモンホソアシナガバチは集団で越冬するのが木の隙間などで見つかります。
餌(エサ)や食べ物
肉食のイメージが強いですが、実際には雑食です。
幼虫の餌は、成虫の働き蜂がイモムシなどを狩って肉団子にして持ち帰ってきます。
成虫は、幼虫が出す栄養液や花のミツ、樹液などをなめて栄養を補給します。
特殊な例だと、ヒメスズメバチはアシナガバチを専門に襲います。
巣を襲撃し、その幼虫や蛹を奪っていきます。
巣の作り
種類によって巣の形や作る場所は様々です。
基本的には、木の繊維を唾液のタンパク質で固めたものを、部屋を作りながら傘状に広げていったものになります。
スズメバチの仲間は樹洞などの中に作るタイプで「オオスズメバチ」や「モンスズメバチ」が知られています。
木の枝や壁に作るものでは「キイロスズメバチ」や「コガタスズメバチ」がいます。
スズメバチの巣の特徴は、巣の周りが外被(がいひ)で覆われていることです。
アシナガバチの巣もスズメバチと同じように作られますが、基本は木の枝や葉っぱの裏に作られていき、外被で覆われることはなくむき出しのままです。
天敵
最強のイメージがあり、実際に他の昆虫や動物を襲う捕食者です。
しかし、そんなスズメバチやアシナガバチにも意外に沢山の天敵が存在します。
有名な捕食者には鳥類で鷹の仲間である「ハチクマ」が知られています。巣を見つけると幼虫やサナギを食べてしまいますが、オオスズメバチであっても毒針がきかないようです。
巣の作り始めだと、アリなどに襲われることもあります。
女王蜂が一匹で巣作りをしている時に、巣材を集めに行ったりエサを探しに出ている間などは巣は完全に無防備で、卵や幼虫が持っていかれてしまうようです。
やられっぱなしにならないよう、巣と木の枝の接している部分などにはアリが嫌がる匂いをつけたりして防御策も講じているようです。
スズメバチに寄生する昆虫としては「ネジレバネ」なども知られています。
他にも、スズメバチの巣に寄生して幼虫が大きくなる種類では「ベッコウハナアブ」や「メイガの仲間」などが知られています。
肉食の他の昆虫等では「オオカマキリ」「オニヤンマ」「クモ」「ムシヒキアブ」などがスズメバチやアシナガバチを捕らえているのが観察されます。しかし、これらは逆にスズメバチが捕食することもあります。
毒性と対策
スズメバチやアシナガバチの仲間は毒針を持っていて人を刺すことがあります。
刺すのはメスだけ
毒針は産卵管が発達したものなのでメスしか毒針を持ちません。
オスを触っても刺されることはありませんが、働き蜂は全てメスなので見分けがつかない場合は触らないようにしましょう。
毒性
スズメバチ、アシナガバチ共に毒性はありますが、特にスズメバチの仲間の毒は「毒のカクテル」とも呼ばれる複雑な混合物で種類によってその成分の比率などは異なります。
スズメバチの中でもオオスズメバチは特に強力な毒を持っているとされていますが、その毒自体で死亡する例は稀になります。死亡事故に繋がる場合は、急性アレルギー反応であるアナフィラキシーショックで亡くなることが多いようです。
アシナガバチの仲間の毒はスズメバチほど強力ではなく、痛みや腫れが出る程度で済むことも多いようです。
しかし、種類によって強さも異なりますし、アナフィラキシーショックの危険性があることに変わりはありません。
よく、刺されるのが二回目が危険だというのはアナフィラキシーショックの危険性が高まるからですが、条件が整えば刺されるのが一度目でも起こる可能性がありますので気をつけましょう。
刺されないためにできること
- 近づかない
- 刺激しない
- 肌の露出は少なく
- スズメバチを興奮させない
- 黒いものを身に着けない
スズメバチを見かけたら近づかないのが一番です。飛んでいるのを見かけたら近くに餌場か巣があるかもしれないので離れましょう。
どの蜂でもそうですが、巣に近づくと警戒してきます。それと不用意に近づいたり、うっかり払いのけようと手を出すと刺されることがあります。
スズメバチですと、衣類を突き抜けて刺してくることがありますがそれでも肌の露出は少ないほうがましです。
香水の一部にはスズメバチを興奮させる成分が含まれているものがあるようです。つけないのが無難です。
黒いものを狙う習性がありますので、明るい服を着たほうが安全です。しかし、白い服を来ているからといって刺されないわけではないので注意しましょう。
スズメバチの仲間には攻撃性の高い種類も多いので特に気をつけましょう。アシナガバチの仲間ですと、掴んだりしない限りはめったに刺されることはありません。
刺されたら
すぐに病院へ行きましょう
応急処置
- 毒を絞る
- 水で洗う
- 冷やす
体内に入った毒を絞り出すのは有効です。しかし、口で吸ったりすると危険なのでやめましょう。口の中に傷があった場合などは毒が入る可能性があります。
流水で患部を洗うのも効果的です。毒が洗い流されるのと、毒が水に溶けるので少しマシになることが期待できます。冷やす効果も期待できます。
冷やすと血管が収縮して毒の周りが遅くなります。
スズメバチなどに刺された場合は、単時間でショック症状に陥ることがあるようです。特に小さな子供の場合などは危険ですので、上にあげたのはあくまで応急処置なので急いで病院へ連れていきましょう。
被害に合うのが公園などならすぐに病院にも連れていけますが、登山などで被害に合うと病院へ到着するのが遅れる可能性が高まります。どんな蜂に刺されたかわからないこともあるかと思いますので、万が一に備えて置くのが大切です。
ちなみに、尿をかけるのは迷信です。私も小さい頃にはハチに刺されたら尿をかけると良いという話を聞いていましたが、どーやら効果はないようです。雑菌などが傷口から入るだけなのでやめましょう。
駆除の方法
- 煙幕
- 殺虫剤
- 掃除機で吸い込む
- 粘着質で捕える
駆除の方法は様々です。
煙幕で燻したり、殺虫剤を使ったりしながら巣をまるごと袋などに詰めて取り払います。専門家によっては掃除機を使ってハチを吸い込む方法などもとるようです。
養蜂などでは、スズメバチが襲ってくることが予測できる場合もあります。スズメバチが降りてくる場所がわかっていれば、ネズミ捕り用の粘着シートなどを置いておけばスズメバチがどんどん捕まっていきます。
駆除はハチを確実に怒らせることをして取り払う行為です。素人が安易に手を出すと危険なので、どーしても駆除したほうが良い場合は業者に頼むのが良いでしょう。
しかし、やりすぎには注意してほしいと思います。スズメバチやアシナガバチには益虫の面もありますし、共存できる形が理想だとは思います。
人との関わり
食べる
中部地方などでは、蜂の子を食べる習慣が残っています。「ヘボめし」と呼ばれ、クロスズメバチの幼虫や蛹の炊き込みご飯です。
他にも、スズメバチの成虫を素揚げにしたり、幼虫やサナギを茹でて食べるのはかなりの美味です。
ハチミツ漬けや焼酎漬けなども人気があります。
地域によっては蜂を狩るための猟も行われています。
何故食べるのかを考えてみましょう。正直、ハチ巣をわざわざ探すとなるとかなりの手間と労力がかかります。その割に取れる量は知れています。コスパで考えるととても悪いのです。それでも手間ひまかけてでも食べたくなるような食材なのです。
益虫(生物農薬)
スズメバチやアシナガバチは、農業害虫であるイモムシや毛虫などを狩って幼虫の餌にするものが多く知られています。ですから、生物農薬としての益虫として注目されています。
ビニールハウス内にアシナガバチなどが巣を作った場合には、農薬を殆ど使わずとも作物を育てることができ、減農薬に繋がります。