写真ギャラリー
カイコってどんな虫?
可愛い虫(笑)可愛いと思いませんか?写真たくさん見て下さい!
人との関わりが深く、絹糸を取るために品種改良をしながら育てられてきました。今では人の手が入らないと生きていけない儚さもあるのですが、そこも可愛いいと話題にのぼることがあります。
カイコは蛾(ガ)の仲間になります。ガの仲間と聞くと印象よく思わない人もいますが、カイコの写真を見せてあげると大抵の人は可愛いと言います。その姿はまるで白い天使そのもので、ふわふわの毛並みやクリクリしたおめめがとても可愛いのです。
野生で生きていく力は失ってしまいましたが、それでも懸命に羽を震わせます。しかし、飛ぶ力は持っていません。そんな姿を儚くも愛らしいと感じるのです。
養蚕(ようさん) ~人との関わりの深い昆虫~
日本に限らず世界中で絹糸(シルク)を取るために育てられてきました。
絹糸の生産
絹糸はシルクと呼ばれ高級で高品質な素材として人気があります。絹糸で作られた織物は滑らかな手触りと上品な艶やかさがあります。
そんな絹糸はカイコが繭になる時に吐き出す糸を集めて作られるものなんです。
家畜化されたカイコの作る糸は家蚕(かさん)とも呼ばれます。カイコではありませんが、ヤママユの仲間などがつくる繭のことを野蚕(やさん)もしくはワイルドシルクと呼んだりもします。
家畜化された昆虫
絹糸を取るために品種改良をしながら飼育されてきましたが、今では野生に帰る力は失ってしまいました。野生回帰能力を失ってしまった唯一の家畜動物でもあります。
カイコと養蚕の歴史
5000年前には中国でカイコの飼育がされていたそうです。その時代のものと思われる絹織物が見つかっているのです。
そこから養蚕業(ようさんぎょう)として世界中に広がっていきました。日本においては弥生時代頃に日本に渡ってきたと考えられており、奈良時代になってくると全国的に養蚕が行われるようになりました。
日本で生産されるようにり、初めの頃は品質がそれほど高くなかったようですが、江戸時代には養蚕が推奨されたこともあって技術の向上から良質な絹糸が作られるようになりました。その後は主要な輸出品として日本の産業を支えるほどにまで発展していきます。
この頃では農家や一般家庭の副業的な飼育も盛んに行われていたようです。
明治時代には外貨獲得産業として、日本の近代化の礎を築いたとまで言われますが、1940年頃には代替品となるナイロンの発明や戦士の影響で一気に衰退していきます。そこからは多少の回復を見せるものの、現在ではほとんど養蚕業は残っていない状況です。
カイコの起源の謎
5000年以上前の中国で始まったとされていますが、かなり前のことになるので解らないことが多いようです。
どのようにカイコを飼いならして飼育できるようにしていったのか神秘的ですね。
クワコが原種か?
見た目も似た種類で野生には「クワコ」というガがいます。そのクワコの先祖を家畜化したものがカイコであるという説が一般的です。全く違う種類であった説などもありますが、DNAの解析などで先祖であったことがわかっています。
絹糸以外の用途
- 冬虫夏草の栽培
- 工芸品
- 化粧品
- 家畜の飼料
- ペットの餌(爬虫類、両生類、魚類など)
- 釣り餌、魚の餌
- 佃煮や炒め物などの料理
- 宇宙食
- 蛹油(食用油、石鹸)
- 漢方
- 医薬品の原料
- 成長の観察教育
- 自由研究
口がない?理由?
「カイコには口がないって本当ですか?」などと聞かれますが、結論から言うと口はあります。
口がないのではなく、成虫になってから何も食べないだけなんですね。もともとの性質なのかは知りませんが、幼虫のときにモリモリとたくさん食べて大きくなります。そして、たくさんの糸を吐いてもらうように品種改良されてきました。そして、成虫の役割は長生きをすることではなく、たくさんの卵を産んで子孫を残すことです。
ですから、成虫になるとすぐにオスとメスは交尾をします。そして役目を果たすと何も食べずに死んでしまいます。
しかし、成虫の口には食べる以外の役割があります。
繭(まゆ)の中のサナギから羽化すると、口からタンパク質を分解する酵素を吐き出して糸を破って出てくるのです。
これがうまくできないと、繭から抜けて出てくることができません。
一生と成長
産卵(さんらん)
メスのカイコが卵を産みます。
お尻の先で産みやすそうな場所を探すような動きをして、ある程度まとまった塊で産卵していきます。
卵(たまご)
産みたて卵は黄色いですが、受精した卵は2日くらいで黒っぽくなってきます。
黒っぽくならない卵は受精できていない卵です。
孵化(ふか)
気温や湿度によって異なってきますが、10日~2週間位で孵化(ふか)が始まります。
冬などの寒い時期には休眠させることもできます。
2ヶ月以上冷蔵庫に入れておいて暖かくなったら冷蔵庫から出すと10日ほどで孵化します。
幼虫
一齢幼虫(初齢幼虫/毛蚕/蟻蚕)
生まれたての幼虫は黒く毛が生えている姿をしていて「毛蚕(けご)」や「蟻蚕(ぎさん)」と呼ばれます。
ここから脱皮をしながら成長し、体が白くなっていきます。
眠(みん)
脱皮前の準備で動かなくなっている時期のことを「眠(みん)」と呼びます。
終齢幼虫になるまで、眠に入って脱皮の繰り返しです。
二齢幼虫
黒かった頭部の色が明るくなります。
小さなカイコの幼虫らしい雰囲気に成長します。
三齢幼虫
ここからは脱皮するたびに大きく成長していきます。
四齢幼虫
姿は大きく変わりませんが、明らかに頭部が一回り大きくなっています。
五齢幼虫(終齢幼虫)
5齡幼虫(終齢幼虫)までなると、体も大きくなりかなりの量の食事をとります。
幼虫期間に食べる餌(エサ)のうち約9割をこの5齢幼虫の時期に食べると言われています。
幼虫の期間は約一ヶ月ほどです。
塾蚕(じゅくさん)
カイコは繭(まゆ)を作ってその中でサナギになります。
糸をたくさん吐き出すために、体内に糸の元になる成分をたくさん作ります。
この状態を塾蚕(じゅくさん)と呼び、白かったカイコに黄みがかかり、透けた印象に変化します。
体長も少し縮んできます。繭を作る合図でもあります。
営繭(えいけん)
ご飯を食べすに糸を吐くようになったら「蔟(まぶし)」と言われる、繭づくりのためのおうちへ持っていきます。
その中で気に入った場所を見つけると、繭を作ってくれます。
たくさんのカイコの飼育や観察をするのには蔟を」使うのが効果的ですが、少ない数のカイコを観察する場合は他のものも色々と利用できます。
おまけ:蔟(まぶし)作り
販売もされていますが、自作もできます。
いらない段ボールを程よい幅にカットし、切込みを入れてつなげると自作の蔟が完成します。
繭(まゆ)
シルク(絹糸)として利用する場合は、繭が完成した時点で糸を取ります。
カイコの品種によって、糸が白いものから黄色っぽいものまでいろんな糸を取ることができます。
写真の繭はカイコが成長して出てきたので上部に穴が空いています。
蛹(サナギ)
繭の中でカイコはサナギに変化しています。
どんなサナギなのか気になったので、ちょっとのぞいてみました。
蛹(サナギ)の期間は10日から二週間ほどと言われています。
しかし、以前育てたカイコは気温が低かったせいか3週間かかったことがあります。
羽化(うか)
繭の中で羽化しますが、出られなければ死んでしまいます。
カイコは口から繭を溶かす成分を出して穴を開けて出てきます。
成虫(せいちゅう)
カイコの成虫は何も食べずに10日から二週間くらいで死んでしまいます。
ですから、死ぬ前に次代の命をつないでおかないといけないので、羽化するとすぐに交尾、産卵をします。
飼うことは出来る?
幼虫の餌(エサ)は桑(クワ)の葉
幼虫の餌は桑(クワ)だけです。育てようと思ったら桑の葉が手に入ることが重要になります。
毎日新鮮な葉を摘んであげましょう。
桑の葉が手に入らないときには人工飼料を使うことができます。注意点としては人工飼料を与えてしまうと、もう桑の葉は食べなくなってしまうことです。人工飼料で育てることになったら最後までそれで育てましょう。
(最近ではどちらの飼料でも育てられるカイコもいます。)
成虫はエサも食べない、水も飲まないので霧吹きもいらない
昆虫の飼育では吸水をする昆虫のために霧吹きなども利用します。しかし、カイコの成虫は水も飲まないので霧吹きをする必要がありません。かといってあまりにも乾燥した環境は早く死んでしまうので気をつけましょう。
幼虫の時は、湿度も大切ですが体が濡れたりすると弱ったり病気になったりするので霧吹きはかけないほうが良いです。
カイコの品種改良の色々
品種改良によって家畜化されてきたカイコはまさにバイオテクノロジーの産物です。世界の各地には色んな品種のカイコが作られており、生産性を早めるために脱皮の回数を短くしたものなども作られています。
蛍光色に光る繭
びっくりしたのは蛍光色に光る繭を作るカイコが作られたことです。これは、オワンクラゲの光る遺伝子を組み込むことで成功したようです。
医薬品の原料
ただ生産性を高めるためだけでなく、新しい素材の開発や医薬品の原料となるタンパク質の生産などにも期待されている昆虫です。カイコは人間にとても関わりが深いのです。
イタリア産の品種「ローズ」
イタリアにはピンクの美しい糸を吐くカイコがいます。「ローズ」と呼ばれる品種だそうです。それを日本で飼育している人から譲っていただいた繭ですが、運の良いことに成虫が羽化しました。