小さな命に輝きを感じる瞬間を「月刊ムシミル」

カイコ

カイコの写真

写真ギャラリー

カイコは白いイモムシです。

まるまるふっくらしています。

サナギになる前にちょっと透けてきます。わかりやすいように透かして撮ってみました。

蔟(まぶし)のお気に入りの場所を見つけて繭作りを始めます。

カイコが繭になりました。

羽化に成功したカイコの成虫。

やたらかわいいカイコ。

手にも乗ってきますが飛べません。

ふわふわの天使のようです。

メス♀の卵の産卵。

カイコの卵。

カイコの交尾。

カイコ(ローズ)のオス♂。

カイコ(ローズ)のオス♂。

カイコ(ローズ)のメス♀。

カイコ(ローズ)のメス♀。お腹がふっくらしています。

「ローズ」という品種の繭。

凛々しくも可愛いカイコです。

カイコガ科まとめ 蚕蛾図鑑

カイコってどんな虫?

可愛い虫(笑)可愛いと思いませんか?写真たくさん見て下さい!

人との関わりが深く、絹糸を取るために品種改良をしながら育てられてきました。今では人の手が入らないと生きていけない儚さもあるのですが、そこも可愛いいと話題にのぼることがあります。

カイコは蛾(ガ)の仲間になります。ガの仲間と聞くと印象よく思わない人もいますが、カイコの写真を見せてあげると大抵の人は可愛いと言います。その姿はまるで白い天使そのもので、ふわふわの毛並みやクリクリしたおめめがとても可愛いのです。

野生で生きていく力は失ってしまいましたが、それでも懸命に羽を震わせます。しかし、飛ぶ力は持っていません。そんな姿を儚くも愛らしいと感じるのです。

カイコの写真
まるで、白い天使のような可愛さです!
カイコの写真
かわいいカイコの成虫
カイコ ローズの写真
カイコ(ローズ)の成虫

カイコの幼虫の写真
かわいいカイコの幼虫
カイコ ローズの写真
カイコ(ローズ)の成虫
口はありますね!

養蚕(ようさん) ~人との関わりの深い昆虫~

日本に限らず世界中で絹糸(シルク)を取るために育てられてきました。

絹糸の生産

絹糸はシルクと呼ばれ高級で高品質な素材として人気があります。絹糸で作られた織物は滑らかな手触りと上品な艶やかさがあります。

そんな絹糸はカイコが繭になる時に吐き出す糸を集めて作られるものなんです。

家畜化されたカイコの作る糸は家蚕(かさん)とも呼ばれます。カイコではありませんが、ヤママユの仲間などがつくる繭のことを野蚕(やさん)もしくはワイルドシルクと呼んだりもします。

家畜化された昆虫

絹糸を取るために品種改良をしながら飼育されてきましたが、今では野生に帰る力は失ってしまいました。野生回帰能力を失ってしまった唯一の家畜動物でもあります。

カイコと養蚕の歴史

5000年前には中国でカイコの飼育がされていたそうです。その時代のものと思われる絹織物が見つかっているのです。
そこから養蚕業(ようさんぎょう)として世界中に広がっていきました。日本においては弥生時代頃に日本に渡ってきたと考えられており、奈良時代になってくると全国的に養蚕が行われるようになりました。

日本で生産されるようにり、初めの頃は品質がそれほど高くなかったようですが、江戸時代には養蚕が推奨されたこともあって技術の向上から良質な絹糸が作られるようになりました。その後は主要な輸出品として日本の産業を支えるほどにまで発展していきます。
この頃では農家や一般家庭の副業的な飼育も盛んに行われていたようです。

明治時代には外貨獲得産業として、日本の近代化の礎を築いたとまで言われますが、1940年頃には代替品となるナイロンの発明や戦士の影響で一気に衰退していきます。そこからは多少の回復を見せるものの、現在ではほとんど養蚕業は残っていない状況です。

カイコの起源の謎

5000年以上前の中国で始まったとされていますが、かなり前のことになるので解らないことが多いようです。
どのようにカイコを飼いならして飼育できるようにしていったのか神秘的ですね。

クワコが原種か?

見た目も似た種類で野生には「クワコ」というガがいます。そのクワコの先祖を家畜化したものがカイコであるという説が一般的です。全く違う種類であった説などもありますが、DNAの解析などで先祖であったことがわかっています。

絹糸以外の用途

  • 冬虫夏草の栽培
  • 工芸品
  • 化粧品
  • 家畜の飼料
  • ペットの餌(爬虫類、両生類、魚類など)
  • 釣り餌、魚の餌
  • 佃煮や炒め物などの料理
  • 宇宙食
  • 蛹油(食用油、石鹸)
  • 漢方
  • 医薬品の原料
  • 成長の観察教育
  • 自由研究

口がない?理由?

「カイコには口がないって本当ですか?」などと聞かれますが、結論から言うと口はあります。
口がないのではなく、成虫になってから何も食べないだけなんですね。もともとの性質なのかは知りませんが、幼虫のときにモリモリとたくさん食べて大きくなります。そして、たくさんの糸を吐いてもらうように品種改良されてきました。そして、成虫の役割は長生きをすることではなく、たくさんの卵を産んで子孫を残すことです。
ですから、成虫になるとすぐにオスとメスは交尾をします。そして役目を果たすと何も食べずに死んでしまいます。

しかし、成虫の口には食べる以外の役割があります。
繭(まゆ)の中のサナギから羽化すると、口からタンパク質を分解する酵素を吐き出して糸を破って出てくるのです。
これがうまくできないと、繭から抜けて出てくることができません。

一生と成長

産卵(さんらん)

メスのカイコが卵を産みます。

カイコの写真
産卵の様子

お尻の先で産みやすそうな場所を探すような動きをして、ある程度まとまった塊で産卵していきます。

卵(たまご)

産みたての卵は黄色い
カイコの写真
受精している卵は色が変わっていきます
カイコの写真
色が濃くなっていき、黒っぽくなります

産みたて卵は黄色いですが、受精した卵は2日くらいで黒っぽくなってきます。
黒っぽくならない卵は受精できていない卵です。

孵化(ふか)

気温や湿度によって異なってきますが、10日~2週間位で孵化(ふか)が始まります。

冬などの寒い時期には休眠させることもできます。
2ヶ月以上冷蔵庫に入れておいて暖かくなったら冷蔵庫から出すと10日ほどで孵化します。

透けた殻の中に、幼虫の姿が確認できる卵が見られるようになリました
卵の殻を食べて、小さな穴を開けて脱出します
カイコの写真
体が通るサイズの穴が空いたら、ゆっくり出てきます

幼虫

一齢幼虫(初齢幼虫/毛蚕/蟻蚕)

生まれたての幼虫は黒く毛が生えている姿をしていて「毛蚕(けご)」や「蟻蚕(ぎさん)」と呼ばれます。

ここから脱皮をしながら成長し、体が白くなっていきます。

カイコの写真
生まれたての幼虫
カイコの写真
餌を食べて大きくなると白っぽくなっていきます
カイコの写真
黒っぽさが無くなりましたが、頭部の大きさは生まれたてのときと同じです。

眠(みん)

脱皮前の準備で動かなくなっている時期のことを「眠(みん)」と呼びます。
終齢幼虫になるまで、眠に入って脱皮の繰り返しです。

カイコの写真
眠に入ると餌を食べなくなり、ほとんど動きません。

二齢幼虫

黒かった頭部の色が明るくなります。
小さなカイコの幼虫らしい雰囲気に成長します。

カイコの写真
脱皮したては頭部も明るい(右のカイコは脱皮中で頭部に一齢の頭がついてる)
カイコの写真
二齢からカイコの幼虫らしくなってきました

三齢幼虫

ここからは脱皮するたびに大きく成長していきます。

カイコの写真
もうすぐ脱皮して三齢幼虫。二齢の頭部の下に新しい顔がのぞいて見えます。
カイコの写真
少しずつ前に進むように古い皮を脱ぎます。後ろのくしゃくしゃの部分が脱皮した皮です。
カイコの写真
大きくなった三齢幼虫と二齢になりたての幼虫。すごいペースで大きく成長していきます。

四齢幼虫

姿は大きく変わりませんが、明らかに頭部が一回り大きくなっています。

カイコの写真
食事をするカイコ

五齢幼虫(終齢幼虫)

5齡幼虫(終齢幼虫)までなると、体も大きくなりかなりの量の食事をとります。
幼虫期間に食べる餌(エサ)のうち約9割をこの5齢幼虫の時期に食べると言われています。
幼虫の期間は約一ヶ月ほどです。

カイコの幼虫の写真
大きくなったカイコのイモムシ。

塾蚕(じゅくさん)

カイコは繭(まゆ)を作ってその中でサナギになります。
糸をたくさん吐き出すために、体内に糸の元になる成分をたくさん作ります。

この状態を塾蚕(じゅくさん)と呼び、白かったカイコに黄みがかかり、透けた印象に変化します。
体長も少し縮んできます。繭を作る合図でもあります。

カイコの写真
成長した終齢幼虫のカイコ
カイコの写真
糸の元を体内にたくさん作ることで色が透けてくる
カイコの写真
成長した終齢幼虫のカイコ
カイコの写真
色の透けた繭づくり直前のカイコ

営繭(えいけん)

ご飯を食べすに糸を吐くようになったら「蔟(まぶし)」と言われる、繭づくりのためのおうちへ持っていきます。
その中で気に入った場所を見つけると、繭を作ってくれます。

カイコの幼虫の写真
蔟(まぶし)の中で繭を作る場所を決めた幼虫。
カイコの繭の写真
カイコの繭。まだ少し繭が薄いのですが、中でまだまだ糸を吐いていきます。

たくさんのカイコの飼育や観察をするのには蔟を」使うのが効果的ですが、少ない数のカイコを観察する場合は他のものも色々と利用できます。

カイコの写真
トイレットペーパーの芯の中で営繭(えいけん)を始めたカイコ。向こうが見えるので、繭づくりの様子を観察しやすいです。

おまけ:蔟(まぶし)作り

販売もされていますが、自作もできます。

いらない段ボールを程よい幅にカットし、切込みを入れてつなげると自作の蔟が完成します。

カイコの写真
蔟を作っていく様子

繭(まゆ)

シルク(絹糸)として利用する場合は、繭が完成した時点で糸を取ります。
カイコの品種によって、糸が白いものから黄色っぽいものまでいろんな糸を取ることができます。

写真の繭はカイコが成長して出てきたので上部に穴が空いています。

カイコの写真
カイコの繭

蛹(サナギ)

繭の中でカイコはサナギに変化しています。
どんなサナギなのか気になったので、ちょっとのぞいてみました。

カイコの写真
カイコ
カイコの写真
カイコ
カイコの写真
カイコ

蛹(サナギ)の期間は10日から二週間ほどと言われています。
しかし、以前育てたカイコは気温が低かったせいか3週間かかったことがあります。

羽化(うか)

繭の中で羽化しますが、出られなければ死んでしまいます。
カイコは口から繭を溶かす成分を出して穴を開けて出てきます。

カイコの写真
繭に穴を開けてカイコが出てきました。
カイコの写真
体が半分以上でてきて脚も使えます。
カイコの写真
お腹がでっぷりとしているので、つっかえてしまいそうです。
カイコの写真
無事に出てくることができました。

成虫(せいちゅう)

カイコの写真
カイコと繭
カイコの写真
可愛らしいカイコの成虫が羽化してきました。

カイコの成虫は何も食べずに10日から二週間くらいで死んでしまいます。
ですから、死ぬ前に次代の命をつないでおかないといけないので、羽化するとすぐに交尾、産卵をします。

カイコの写真
おしりをくっつけます
カイコの写真
交尾の様子

飼うことは出来る?

幼虫の餌(エサ)は桑(クワ)の葉

幼虫の餌は桑(クワ)だけです。育てようと思ったら桑の葉が手に入ることが重要になります。
毎日新鮮な葉を摘んであげましょう。

カイコの写真
桑の葉を食べるカイコ

桑の葉が手に入らないときには人工飼料を使うことができます。注意点としては人工飼料を与えてしまうと、もう桑の葉は食べなくなってしまうことです。人工飼料で育てることになったら最後までそれで育てましょう。
(最近ではどちらの飼料でも育てられるカイコもいます。)

カイコの写真
人工飼料で育つカイコ

成虫はエサも食べない、水も飲まないので霧吹きもいらない

昆虫の飼育では吸水をする昆虫のために霧吹きなども利用します。しかし、カイコの成虫は水も飲まないので霧吹きをする必要がありません。かといってあまりにも乾燥した環境は早く死んでしまうので気をつけましょう。

幼虫の時は、湿度も大切ですが体が濡れたりすると弱ったり病気になったりするので霧吹きはかけないほうが良いです。

カイコの品種改良の色々

品種改良によって家畜化されてきたカイコはまさにバイオテクノロジーの産物です。世界の各地には色んな品種のカイコが作られており、生産性を早めるために脱皮の回数を短くしたものなども作られています。

蛍光色に光る繭

びっくりしたのは蛍光色に光る繭を作るカイコが作られたことです。これは、オワンクラゲの光る遺伝子を組み込むことで成功したようです。

蛍光に光るカイコの繭の写真
蛍光に光るカイコの繭の展示。左の繭がきれいに光っている。

医薬品の原料

ただ生産性を高めるためだけでなく、新しい素材の開発や医薬品の原料となるタンパク質の生産などにも期待されている昆虫です。カイコは人間にとても関わりが深いのです。

イタリア産の品種「ローズ」

イタリアにはピンクの美しい糸を吐くカイコがいます。「ローズ」と呼ばれる品種だそうです。それを日本で飼育している人から譲っていただいた繭ですが、運の良いことに成虫が羽化しました。

カイコ ローズの繭の写真
ローズの繭。白い絹糸とはちょっと雰囲気が違いますね。
カイコ ローズの写真
ローズのメス♀。お腹がまるまるとしています。
カイコ ローズの写真
前脚のちょこんとした感じが可愛いです。

カイコガの仲間はこちら

カイコガ科まとめ 蚕蛾図鑑

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この記事を書いた人

村松佳優

昆虫写真家/講師/カメラマン/ムシミルの運営。

昆虫の面白い!魅力たっぷり!
たくさんの人にそれを知ってもらうことで、人も昆虫もよりよい未来を築いていけたらと思ってこのサイト「ムシミル」を運営しています。

カメラマンやイベント運営などに携わりながら、大学の講師やクリエイターの支援活動もし、次代の育成にも力を入れて活動しています!
詳細なプロフィールはこちらのページで御覧ください。
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