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オオムラサキ

オオムラサキの写真

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オオムラサキ♂。ストロー状の口を伸ばして樹液を吸います。

木の上で葉っぱに乗っているオオムラサキの♂です。(奈良)

樹液にやってきたオオムラサキの♂です(奈良)

オオムラサキの♂を正面から(奈良)

かなり高い位置の葉っぱに止まっていた。縄張りを見張っているのだろうか(奈良)

羽を閉じていると、意外と見つけにくい(奈良)

オオムラサキの♀は黒い羽をしている(奈良)

樹液を吸っているオオムラサキの♀(奈良)

オオムラサキ♂の美しい羽

「タテハチョウ科まとめ 蝶の図鑑」

オオムラサキってどんな蝶?

オオムラサキといえば「国蝶」として知られています。しかし、まだ子供だった時はオオムラサキはレアなチョウでした。クワガタムシと同じように見つけるのが難しかったのです。国蝶というのは日本の代表なのに、私の身近では見られないとはどういうことだ??と疑問に思ったのを覚えています。樹液のたくさん出ている木を見つけられなかったのが原因ですね。

ある時、いつものようにカブトムシやクワガタムシを探しに行ったときです。一瞬木の上に紫色が見えたような気がしました。羽を閉じていると地味な色ですが、樹液を吸っている時に羽を動かしたりします。その時に紫色が一瞬見えることがあるのです。あれはオオムラサキではないのか?と期待を胸に近づいていくとそこには「コムラサキ」がいました。オオムラサキと同じようにオスには紫色の模様が入っていますが明らかに小さいです。

それでも、コムラサキは私の子供時代には珍しいチョウだったので興奮して捕まえたのを覚えています。意外に国蝶であるオオムラサキを自然の中でちゃんと見たのは大人になってからでした。

オオムラサキの幼虫(食草など)

成虫になったオオムラサキは樹液などに集まることが知られていますが、幼虫のときにはどんな食事をしているのでしょう?

食べ物や餌(エサ)はエノキやエゾエノキ

幼虫はエノキやエゾエノキ(ニレ科)の葉を食べて育ちます。

幼虫の越冬

オオムラサキの写真
オオムラサキの幼虫

冬は幼虫の状態で過ごします。
夏に葉っぱを食べているときには緑色だった体も、寒くなってくると周りの葉っぱの色に合わせて変わっていきます。
そして、エノキの木を降りて根本の枯れ葉の中に潜って越冬します。
幼虫は茶色い体になっていますが、これは枯れ葉の中で目立たなくする効果がありますね。
春になって暖かくなり、食草のエノキの葉が芽吹いてくると活動を始めます。
そこから脱皮をすると、また緑色の幼虫になって成長していきます。

エノキの葉の画像
エノキの枯れ葉。
このような葉っぱにくっついて越冬しています。

幼虫の見分け方

幼虫にはまるでツノのような二本の突起が頭についています。なんだか可愛いですよ!

ゴマダラチョウの幼虫との違い

頭にツノのある似たようなイモムシにゴマダラチョウの幼虫がいます。
越冬も幼虫の状態でオオムラサキと同じような場所にいるので、一緒に見つけることも多いです。
しかし、大きな違いがあるので見分けるのは簡単です。
オオムラサキの幼虫の背中の突起は4対であるのに対して、ゴマダラチョウの幼虫の背中の突起は3対しかありません。

オオムラサキの写真
オオムラサキの幼虫は背中の突起が4対です。
ゴマダラチョウの幼虫の写真
ゴマダラチョウの幼虫は背中の突起が3対です。

オオムラサキは捕獲してよいのか?天然記念物なのか?

オオムラサキは日本の「国蝶(こくちょう)」

オオムラサキは国蝶に選定されています。国蝶とは日本昆虫学会が選定したもので、1956年にオオムラサキがが75円切手に採用されたのを契機として選抜されました。他にも、ミカドアゲハ、ギフチョウ、ナミアゲハなどが候補としてあげられていたようです。

天然記念物ではない

国蝶だからといって天然記念物に指定されているわけではありません。ですから捕獲をしても特に罰則もありませんし、飼育観察をしている人もたくさんいます。

準絶滅危惧(NT)

しかし、オオムラサキは準絶滅危惧(NT)に指定されています。現時点で絶滅の危険は小さいけれども、生息条件などの変化で絶滅危惧種に移行する可能性のある種のことです。

どんな生き物でもですが、乱獲などはしてほしくありません。
しかし、飼育観察から学べることはとても多いですし、そういった行動から多くの保護活動なども行われているので見かけたら大切に育ててみるのも良いと思います。

保全活動

日本では全体的に樹林の面積が少なくなっています。そうすると、もちろんオオムラサキの生息する環境も減ってしまうのでオオムラサキ自体も数を減らしていきます。有名なチョウということもありますが、良好な里山の環境シンボルでもあるので、各地で保全活動が行われています。

各所で、ボランティアや団体が保護して育てたオオムラサキを時期が来た時に「放蝶」する催しなどが開催されています。私も一度参加したことがありますが、たくさんの子供達がオオムラサキに触れ、生き物の愛おしさを感じながら林に向けて放してあげているのを見てとても優しい気持ちになれました。生き物に触れるというのはとても大切なことなので、オオムラサキに限らずに多くの生き物が生息できる環境を残していきたいですね。

意外に強いオオムラサキ

オオムラサキの意外な一面として知られるのは、気性が荒く他の昆虫を追い払うのです。
大きな体と羽を持っているので羽ばたく力も強いのですが、その羽ばたきでカブトムシやスズメバチを追い払ってしまうことがあります。
びっくりですね。

これが、コムラサキなどのサイズではこうはいきません。スズメバチが樹液を吸っているのを見かけたときです。コムラサキがやってきましたがスズメバチに追い払われてしまいました。その後は、スズメバチがどこかへ行くのを待つように少し離れたところで様子をうかがっていました。

オオムラサキの特徴

青紫の美しい羽

羽の裏面は黄色から白っぽい色をしています。しかし、羽を広げるとオスは青紫色の綺麗な羽を魅せてくれます。
その美しい青紫色の羽からは高貴な印象さえ感じることができます。羽の模様に白や黄色の紋が入っているのも、その美しい色彩を引き立てています。

オオムラサキの写真
木の上に止まるオオムラサキのオスです。この美しい羽はオスだけが持つものです。

オスとメスの違い

メスは黒褐色の地色に、オスと同じような模様が入っていますが、名前にも入っている紫色の色彩はありません。
メスは羽を広げても地味な印象の羽を持っています。

オオムラサキの写真
オオムラサキのメスは羽が黒い。

樹液に集まる昆虫

クヌギやコナラなどの樹液によく集まります。里山の風景でオオムラサキを始め、カブトムシやカナブンなどが樹液に集まっているシーンがよく見られますね。しかし、そんな光景も開発などで見られる場所が減ってきました。

オオムラサキの写真
樹液にやってきたオオムラサキ。独占状態です。

樹液だけでなく、果実などの汁を吸ったり地面に降りて吸水する行動なども知られています。

オオムラサキの分布や生息地

日本では北海道の一部から九州まで見られる蝶です。広い公園などではなく、林などでよく見かけます。
カブトムシが見つかるような雑木林や、山地のブナ林などでも見かけられます。

オオムラサキの里

広島県の府中市にはオオムラサキの里と呼ばれている場所があります。
1980年にオオムラサキが発見された僧殿町で「国蝶オオムラサキを守る会」が作られ、食草の植樹や保護ネットなどの設置を行ってきたそうです。今では大型の観察ネットなどを設置している場所に休憩所なども作っているようです。
毎年7月の第1日曜日には「オオムラサキを自然にかえす集い」が開かれているようなので見てみたいものです。

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この記事を書いた人

村松佳優

昆虫写真家/講師/カメラマン/ムシミルの運営。

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カメラマンやイベント運営などに携わりながら、大学の講師やクリエイターの支援活動もし、次代の育成にも力を入れて活動しています!
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